24話 窮鼠（1） ページ28
・・・狙いは俺。
アシﾘパ「杉元ッ 松崎ッ 笹薮を通って逃げろ。足跡が目立たないから追跡が遅れる」
杉元の息が上がってきている。
A『これは逃げ切れねぇ・・・』
遂に、杉元の足が止まった。
杉元「アシﾘパさん。ふた手に分かれよう。
やつらは大人の足跡だけを追うはずだ」
俺もアンケシさんを下ろす。
杉元が鞄から刺青人皮を取り出した。
杉元「刺青人皮。これを・・・アシﾘパさんが持っていってくれ」
アンケシ「・・・A。貴方まで行く必要はない」
A『連中の狙いは俺だ』
杉元が目を細めて俺を見たあと話を戻した。
杉元「俺が持っていればおそらくその場で殺される。もしもアシﾘパさんが捕まったら」
「一切抵抗せずにやつらに渡せ！何も知らないふりをしろ。子供まで殺す連中じゃない」
アンケシさんの瞳が不安気に俺を映している。
A『アンケシさん。頼みがあるんだ』
アンケシ「頼み？」
アンケシさんの両肩に手を置き手短に言う。
A『出来るだけアシﾘパの手を引いて遠くに走れ』
アンケシ「・・・・」
A『追手が他にもいるかもしれない。だから、さっきみたいに〃声〃をよく聞いてほしい』
アンケシさんが呟く。
アンケシ「・・・私の耳は万能じゃない」
でも、本物だ。
A『カムイが本当にいるんなら・・・困った人間を見捨てる筈がねぇ。俺に証明してくれ』
アンケシさんの瞳が揺れる。
「【A君。この人たちって・・・？】」
A『必ず・・・俺と杉元で何とかするから』
アンケシ「でも―――」
杉元がアンケシさんを見つめていった。
杉元「アシﾘパさんやアンケシさんにとっては金塊さえ見つけてくれればそれは誰だっていいはずだ」
「俺とAが言ったとおりにするんだぞッいいな？」
杉元が立ち上がり「行こう」と呟く。
アシﾘパとアンケシさんは納得していないような顔だ。
俺と杉元が背を向けた直後だった。
アシﾘパ「杉元。あいつらと戦おうなんて思うなよ！殺されるぞッ」
杉元がフッと笑いアシﾘパとアンケシさんの方に振り返った。
杉元「俺は【不死身】だぜ」
杉元はそのまま真っ直ぐに走っていった。
杉元の背中を追いかけようとした時。
アンケシさんが「A」と俺の名前を呼んだ。
アンケシ「絶対に帰って来いッ！！諦めて大人しく捕まるなんてことしたら許さないぞッ」
・・・諦めて、か。
A『わかった。また後でなッ！』
俺は不屈の松崎だ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 34人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：白文鳥 | 作成日時：2020年9月19日 20時
