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21話 イーッと鳴く小さいもの(2) ページ21

ASide
アンケシさんが俺の隣に座り込みニッコリと笑う。

アンケシ「どうしてエゾウサギは耳の先だけ黒いのか・・・私たちに伝わる昔話にこういうのがあります」

そういえばエゾウサギの耳の先端って黒いよな。

・・・聞いたことあるけど忘れた。


アシリパ「むかしむかしシカはウサギのような足を持っていた。雪の上を速く走れるのでとてもじゃないが人間は捕まえることができない」

アンケシ「そこでウサギがシカを騙して自分の足と取り替えました」

アシリパ「騙されたと気が付いたシカは焚き火の燃えさしをウサギにぶつけた」

アンケシ「それが耳に当たって今でも黒いんだそうですよ」

杉元が面白そうに呟く。

杉元「ふーん・・・じゃあ黒い耳が無ければ真っ白なまんまで雪の中でも見つからずこうしてチタタプになることもなかったわけだ」

シロが飛んできてトコトコとクチャの中に入ってきた。

アンケシさんの膝の上にシロが座った。

杉元「便利な足を手に入れてもそれじゃあ意味が無い」

・・・。

そう言えば赫映は昔話が好きだったな。

大抵、どの昔話にも教訓があるって言ってたっけ。


A『その話に教訓があるとしたら・・・』

皆が俺を見つめる。

A『【欲を出さなければ逃げ回る必要も無かった】・・・・・ってことか』

アンケシさんが目を細めた。

アンケシ「・・・そうかもしれないな」

アシリパがウサギの目玉を取り出し杉元に差し出す。

アシリパ「杉元。ウサギの目玉食べていいぞ」

  「松崎も食べろ〜」

杉元が「イーッ」と鳴く。

A『ウサギかよ・・・』

アシリパ「何だその顔。目玉はその獲物を捕った男だけが食べていいものなんだぞ」

杉元「いいのぉ?いいのぉぉ?」

目玉を受け取って口に含む。

A『・・・うん。普通に食える』

杉元「ウッ あう・・・オエッ」

アシリパ「オエ?」

アンケシさんがシロに肉を食べさせている。

アンケシ「よく食べるな」

シロが嬉しそうに「ガアガア」と鳴いた。


アシリパ「エゾマツタケとオシロイシメジ。
去年採って干しておいたきのこ類だ」

  「そして香辛料として刻んで干したプクサ(行者ニンニク)を肉に混ぜた」

杉元が先に汁物を啜る。

杉元「いただきます。ズズ・・・ハフハフ」

  「う・・・うまいっリスより脂っこくなくてあっさりしてるな」

  「行者にんにくの臭みが食欲を増す。
エゾマツタケの香りがまた・・・いい」

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作者名:白文鳥 | 作成日時:2020年9月19日 20時

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