21話 イーッと鳴く小さいもの(1) ページ20
杉元「ただいまぁ」
アンケシ「おかえりなさい」
アシリパ「お!戻ったかじゃ―――」
・・・なんで、A。
頭怪我してんだ??
杉元「おいA。その頭―――」
A『転んだ』
アンケシ「え?」
転んだって・・・おかしいだろその位置。
杉元「見せて」
A『いい』
Aがフイッとそっぽを向いた。
杉元「おい。A」
A『・・・大丈夫だから』
・・・・・・。
そうだ、そんな事より。
杉元「お前・・・囚人にも追われてんの?」
A『え』
Aの目が大きく見開かれた。
もしかして、本人すら知らないのか?
杉元「囚人は・・・お前を捜すようにのっぺら坊に言われたらしい」
A『・・・』
ん?何この反応。
さては・・・。
杉元「テメェ自分が狙われてるって知ってたのか!?」
A『まあ・・・』
なんで言わねぇんだ!?
杉元「いい加減にしろ!!お前は昔から―――」
A『言う必要が無いと思った』
杉元「・・・・は?」
Aが俺を見つめもう一度その言葉を繰り返した。
A『杉元やアシリパにアンケシさんに言って何になる』
『俺自身の問題だから、黙ってた』
アシリパ「・・・・」
アンケシ「のっぺら坊がAを・・・?」
Aが呟く。
A『・・・かもしれないって話だから俺もそこまで信じてない。気にしないでも大丈夫だろう』
杉元「あァ?だってお前、それ」
A『お前にとっては好都合だろ』
は?
A『囚人がホイホイと俺の基に向かってくるんだから。皮を剥ぎやすくて良いじゃねぇか』
杉元「お前・・・自分を餌みたいに―――」
A『餌になるのは慣れてる。だから良い』
え、餌になるのは慣れてる??
アンケシ「・・・取り敢えず食事にしませんか?」
アシリパ「・・・そうだな。【かもしれない】っていう話で揉める必要は無いだろう」
・・・・・。
ーー
アシリパ「ウサギを食べよう」
アンケシ「私たちはウサギのことをイセポと呼んでいます。【イーッと鳴く小さいもの】という意味です」
アシリパさんがウサギの皮を剥く。
アシリパ「イセポは大きさのわりに食べるところが少ないからチタタプにする」
杉元「出た!チタタプ」
アシリパ「耳の軟骨も食べる。皮を剥いて他の肉や内臓と一緒にチタタプにする」
杉元「無駄が無いねぇ」
黙り込んでいるAの顔をチラリと見る。
何かを考え込んでいる様に見えるが俺にはわからなかった。
34人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:白文鳥 | 作成日時:2020年9月19日 20時