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20話 脱獄王 ページ19

杉元Side
川に落ちた俺たちはまあ色々あって取引した。

あれは・・・死ぬかと思った。

白石「入れ墨の囚人は全部で24名だ。はたして今どれくらい生き残っているのか・・・」

  「のっぺら坊の仲間のことも本当に知らん。それについて知っているのは脱獄の指揮をした囚人たちの親玉だ」

  「いや・・・ひとつだけ、共通して知ってることもあるが」

・・・共通。

杉元「親玉はどんな野郎だ?」

白石「単なる政治犯のジイさんだと思ってた。おとなしい模範囚だ」

  「ところがどっこい猫かぶっやがってた」

  「俺の目の前で屯田兵から軍刀を奪いあっという間に三人斬り捨てた」

白石が言うにその政治犯のジイさんは三十数年前の函館戦争で戦った敗残兵らしい。

旧幕府軍の侍―――。

白石「これはあくまで噂だがね・・・看守が話しているのを盗み聞きした奴がいる」

  「あのジジイは函館戦争で戦死したといわれてる・・・新撰組鬼の副長。土方歳三だって・・・」

杉元「・・・・・・・・・」

白石がゆっくり立ち上がる。

白石「最後にひとつ教えてやる」

  「俺たち囚人はのっぺら坊にこう指示されていた。【小樽へ行け】」

小樽・・・。

で。

杉元「共通して聞いていた話って?」

白石が外套を羽織りながらニヤリと笑った。

白石「お前の連れの兵隊さん・・・松崎A、だろ」

杉元「・・・あぁ」

白石が呟く。

白石「アイツからは目を離さないことだな。
脱獄囚はアイツを捜している」

杉元「・・・なぜ」

白石が肩をすくめ「教えてやるのはここまでだ」と返した。


杉元「白石と言ったな?次に会うときはその入れ墨を引っぺがすぜ」

  「アイヌの金塊はあきらめてさっさと北海道から脱出するんだな」

  「その入れ墨を狙っているのはほかの囚人たちやのっぺら坊の仲間だけじゃねえ」

白石が俺を見つめる。

杉元「日露戦争帰りの第七師団も追っているんだ。戦いなれた歴戦の戦士たちだぞ――――」

  「きっとやつは・・・捕まえた囚人を監
禁したり入れ墨を模写するような面倒なマネはしねぇ。殺して皮一枚にするのがいちばん合理的なんだ」

  「刺青人皮はメシも食わねえし持ち運びも楽だしテメエみたいに逃げ出すことも無いからな」

白石がドヤ顔をしながら言う。

白石「俺は脱獄王だ。誰に捕まろうが煙のように逃げてやるさ」

  「アバヨ【不死身の杉元】。【不屈の松崎】に宜しく言っといてくれ」


・・・なぜ囚人がAを?

21話 イーッと鳴く小さいもの(1)→←19話 光と影(2)



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作者名:白文鳥 | 作成日時:2020年9月19日 20時

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