17話 夢をみた(2) ページ13
干し柿って・・・。
杉元「まじ!?それを夢で見たの?お前」
A『まぁ・・・夢の中の俺は杉元のことを佐一って呼んでいて、恐らく泣き虫な男の子が寅次だろ』
杉元「そうそう!アイツすぐ泣くんだよな。俺とお前に投げ飛ばされたり喧嘩して負けたりしてさ」
Aが『そんな顔してる』と微笑む。
A『女の子が・・・梅か』
杉元「梅子って言うんだ。美人だったろ?」
Aが『さあ』と肩をすくめる。
A『なあ・・・杉元は梅と付き合ってたのか?』
・・・・。
杉元「あのさ。話変わるんだけど」
A『ん』
杉元「俺・・・戦争に行く前に一度村を出たんだ」
A『え?』
Aが俺を見つめた。
杉元「俺の家族は全員結核で命を落としたんだけど、その・・・親父はその頃まだ生きててさ」
「でも少し経った頃に、親父が命を落とした」
Aが静かに俺を見つめている。
杉元「だから・・・村を出ることにしたんだ。
その時に梅ちゃんに連れてってっていわれてな」
「親父の結核が感染っているかもしれない。だから俺は梅ちゃんを置いていった」
「一年、二年経ってもしも俺が結核にかかってなかったら、迎えに行こう・・・って」
A『・・・・・』
杉元「でも、村に帰ったら梅ちゃんは寅次と結婚してた」
こいつにこんな事を言って何になるんだか。
A『神奈川に帰ったら梅に言えばいい。梅が好きなんだろ』
杉元「・・・・」
それが出来たら、苦労しない。
それに梅ちゃんは・・・・。
杉元「梅ちゃんの基に帰ったらさ。
俺・・・「どなた?」って言われちゃったんだ。俺の【匂い】が変わっちまったんだと」
Aが目を細めた。
そして、俯いて『そうか』と返した。
杉元「梅ちゃんが知っている俺はもうこの世には居ないんだろうな」
外で木々が揺れた音がする。
北海道の夜は酷く冷え込む。
Aがポツリと呟いた。
A『俺は・・・杉元がどういった奴だったのか知らないし、覚えてない』
杉元「あ〜うん」
Aの手が俺の背中に触れた。
杉元「え?な、何?」
優しい目を俺に向けて言った。
A『梅はきっと。杉元の帰りを待ってるんじゃないのか?』
杉元「・・・え?」
A『俺の恩人が言ってた。「おかえり」って言ってあげないと「ただいま」って言えないから。皆、誰かの帰りを待つんだって』
あぁ・・・じゃあ。
俺、お前に言わなきゃな。
杉元「おかえり。A」
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作者名:白文鳥 | 作成日時:2020年9月19日 20時