検索窓
今日:13 hit、昨日:4 hit、合計:12,756 hit

142話 実りの季節(2) ページ10

流石は実りの秋。

至るところに食べるものがある。

アシリパ「杉元か松崎あれ採ってくれ。クッチだ。サルナシの実を私たちはそう呼んでる」

食欲旺盛なアシリパは俺と杉元にお願いをしてきた。

杉元が直ぐに動きクッチを手に呟いた。

杉元「サルナシの蔓はかんじきになるんだよな?アシリパさんアンケシさん」

アンケシ「そうだ。植物の蔓には無駄がない」

アシリパ「よく覚えてたな杉元」

俺達は早速クッチを食べた。

杉元「クッチ美味いよ。アシリパさん。アンケシさん。とっても甘い」

アンケシ「クッチはヒグマも大好きでこの時期たくさん食べるんだ」

アンケシさんが俺に山程クッチを手渡してきた。

アンケシ「いっぱい食べろA。
クッチは食べ過ぎると肛門がとても痒くなる。もっと食べろA」

A『俺が肛門痒くなる姿みて面白い?』

とは言ってもアンケシさんは無理矢理俺の口にクッチをねじ込んだ。

アシリパ「もっと食べろ杉元」

杉元「チュパチュパチュパチュパチュパチュパ」


ーー

アシリパ「東に住むアイヌは野いちごをサケイチゴと呼ぶそうだ。実が赤くなると鮭が遡って知らせにくるからだ」

  「ホザキシモツケの花が散ると鮭が遡ってくる知らせだという地域もある」

A『そうやってアイヌは毎年鮭を待ち望んでいたんだなぁ』

アンケシさんが大きく頷いた。

アンケシ「鮭は鹿と同じようにそれ自身がカムイではなく天上のカムイの袋の中に入っていて海にバラ撒かれるものなんだ」

  「アイヌにとって鮭は主食で水や空気と同じ当たり前に存在するものだと考えられている」

  「だからといって鮭を粗末に扱ったり川を汚せばカムイの袋の口は開かれなくなり人間はひもじい思いをしながら冬を越すはめになる」


俺たちは山道をゆっくり歩いていった。


少し経った頃、アンケシさんとアシリパが木の前に立ちあるものを発見した。

アンケシ「見ろA、佐一。屋根じゃない立木にヒグマが爪で横に引っ掻いた傷がある」

アシリパ「これは熊同士に通じる印で自分の領域を知らせるものだ」

  「【チセ シロシ(家の印)】と猟師は呼んでいる。近くにヒグマの巣穴があるからだ」

二人が辺りを見回しウンと頷いた。

アンケシ「このへん一帯の笹が刈り取られている」

アシリパ「ヒグマが冬に備えて巣穴に運び込んだからだ。かなり巣穴が近い証拠だ」


俺と杉元の顔を見て問いかけてきた。

142話 実りの季節(3)→←142話 実りの季節(1)



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (18 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
13人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:白文鳥 | 作成日時:2020年12月22日 23時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。