142話 実りの季節(2) ページ10
流石は実りの秋。
至るところに食べるものがある。
アシリパ「杉元か松崎あれ採ってくれ。クッチだ。サルナシの実を私たちはそう呼んでる」
食欲旺盛なアシリパは俺と杉元にお願いをしてきた。
杉元が直ぐに動きクッチを手に呟いた。
杉元「サルナシの蔓はかんじきになるんだよな?アシリパさんアンケシさん」
アンケシ「そうだ。植物の蔓には無駄がない」
アシリパ「よく覚えてたな杉元」
俺達は早速クッチを食べた。
杉元「クッチ美味いよ。アシリパさん。アンケシさん。とっても甘い」
アンケシ「クッチはヒグマも大好きでこの時期たくさん食べるんだ」
アンケシさんが俺に山程クッチを手渡してきた。
アンケシ「いっぱい食べろA。
クッチは食べ過ぎると肛門がとても痒くなる。もっと食べろA」
A『俺が肛門痒くなる姿みて面白い?』
とは言ってもアンケシさんは無理矢理俺の口にクッチをねじ込んだ。
アシリパ「もっと食べろ杉元」
杉元「チュパチュパチュパチュパチュパチュパ」
ーー
アシリパ「東に住むアイヌは野いちごをサケイチゴと呼ぶそうだ。実が赤くなると鮭が遡って知らせにくるからだ」
「ホザキシモツケの花が散ると鮭が遡ってくる知らせだという地域もある」
A『そうやってアイヌは毎年鮭を待ち望んでいたんだなぁ』
アンケシさんが大きく頷いた。
アンケシ「鮭は鹿と同じようにそれ自身がカムイではなく天上のカムイの袋の中に入っていて海にバラ撒かれるものなんだ」
「アイヌにとって鮭は主食で水や空気と同じ当たり前に存在するものだと考えられている」
「だからといって鮭を粗末に扱ったり川を汚せばカムイの袋の口は開かれなくなり人間はひもじい思いをしながら冬を越すはめになる」
俺たちは山道をゆっくり歩いていった。
少し経った頃、アンケシさんとアシリパが木の前に立ちあるものを発見した。
アンケシ「見ろA、佐一。屋根じゃない立木にヒグマが爪で横に引っ掻いた傷がある」
アシリパ「これは熊同士に通じる印で自分の領域を知らせるものだ」
「【
二人が辺りを見回しウンと頷いた。
アンケシ「このへん一帯の笹が刈り取られている」
アシリパ「ヒグマが冬に備えて巣穴に運び込んだからだ。かなり巣穴が近い証拠だ」
俺と杉元の顔を見て問いかけてきた。
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作者名:白文鳥 | 作成日時:2020年12月22日 23時