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155話 戦士(1) ページ42

俺は動かなくなった親父を呆然と見つめていた。

A『・・・・・・はぁ』

何も言葉が浮かばない。

手のひらの中にあるふたつの指輪が、赤黒く濁っている。

自分の血のせいか、父親の血のせいか。

俺には見当がつかなかった。


A『・・・・ロシア人を、探さないと』

左足を引きずりながら教誨堂に向かって歩き出す。

A『はぁ・・・はっ・・・はぁ・・・』

真っ暗な道を壁に手を付きながら、歩いていると、照明弾が一つ二つと打ち上がった。

角を曲がったとき、俺は人とぶつかった。


敵かと思い、軍刀に手を添えるが、どうやら違うみたいだ。

目の前に、片腕しかない上背のある男が立っていた。

俺は息を呑んだ。


男は俺を視界の端にいれると、クルリと背を向けた。

A『・・・イソンノアシか?』

確かめようと声をかけると男が驚いた顔をしてこちらを振り返った。

俺はポケットから、マタンプシを取り出した。

A『これに見覚えは?』

男が「アンケシの・・・鉢巻」と呟いた。

A『やっぱりイソンノアシはアンケシさんの父親だったのか・・・』

そんな気はしていた。でも、認めたくなかった。


イソンノアシの体は所々包帯が巻かれており、酷い火傷を覆い隠している様だった。

イソンノアシ「来ている・・・のか?ここに」

A『来いッ 全部話してもらうぜ』

俺がイソンノアシの囚人服を掴むと、手を払いのけられた。

イソンノアシ「金塊・・・・・知りたければアンケシを連れてこい」

イソンノアシがまじまじと俺を見つめ、「あ」と呟いた。

イソンノアシ「お前は・・・ウイルクが言っていたシサムの子供か?」

A『・・・俺のこと知ってたのか』

  『それも聞かせてもらうけど・・・』

金塊や俺のことなんかより。

もっと大事なことがあるんだよ。

A『ず〜っとあんたに言いたいことがあった。本当はなぁ・・・あんたをアンケシさんに会わせたくねぇよ!!』

  『あの子は・・・【アイヌを殺して金塊を奪う手伝いをしたロシア人が本当に父親だったら・・・】とおびえていた』

俺はイソンノアシの胸ぐらを掴み、叫んだ。

A『どうしてアンケシさんにカムイの声を聴く力があると、コタンの連中に言いふらした?』

  『黙っていればよかったのに、なぜこの碁に及んで自分の存在を明かし近衛師団に公表した!』

  『なぜアンケシさんを巻き込んだ!!』


俺は、テメエのことを理解できねぇ!!

155話 戦士(2)→←154話 親子(3)



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作者名:白文鳥 | 作成日時:2020年12月22日 23時

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