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153話 対面(2) ページ38

寿三「雪菜は・・・不幸な女だった」

A『不幸?』

親父が頷く。

寿三「女であるから成りたかった武士にはなれなかった。アイツは可哀想な女だよ」


「【Aには自分の信じる道に向かってほしいの】」

「【・・・私は、諦めてしまったから】」


A『ッ・・・』

激しい憎悪が膨らむ。

何か固いものでも飲み込んだような感覚だ。

焼けるような胸の痛み。


堪えろ。

堪えて、少しでも時間を稼ぐ。

A『母さんをあの日殺して・・・少しも後悔は無かったのか?』

  『母さんをお前は愛していたんじゃないのか?』

寿三「・・・・・・・そんなくだらないことを今更言って何になる?」

  「私が雪菜を愛していたら殺せなかったはずだと思っているのか?A」

  「・・・・・・・だとしたらお前は戦争で何も学ばなかったということだな」

親父は無言で俺を見つめる。

寿三「ほかに、聞きたいこともないのか」

A『・・・そうだ。覚えてるか?』

寿三「なにをだ」

A『ガキの頃・・・俺が何に成りたかったのか』

寿三「・・・・・・銃の整備士」

出会い頭に一発。

そして、先程三発、弾を撃っていた。

アホみたいに撃っていたから、熱が溜まっているんじゃないのか――・・・。


A『親父・・・今からでも。
なれるかなあ・・・・・』

寿三「今から?何言ってるんだ。
お前に与えられた時間は残り僅か――」

  「そうだ・・・私の下僕になると約束しろ。そうすれば助けてやる」

俺は親父を真っ直ぐ見つめた。

A『カント オロ ワ ヤク サク ノ アランケ プ シネプ カ イサム』

親父が「はぁ?」と俺を睨みつけた。

A『天から役目なしに降ろされたものはひとつも無い』

  『アンタにも、役目ってものがあるんだよ。皮肉にも』

寿三「急に意味わからんアイヌ語を話したと思えば・・・知識をひけらかしたかっただけか?
それが最後にやりたかったのか?」

A『・・・・・俺の役目は、ありとあらゆる悪から善人を守ることなんじゃないのかって・・・ようやく自分の手が誰よりも大きいのか』

  『これからどうやって生きていけばいいのか。わかったんだよ』

親父は鼻で笑い引き金に指を当てた。

寿三「・・・・・来世の自分に伝えればいい。
もう少し【賢い生き方】をしなければ後悔するぞってな」

A『・・・・・そっちこそ』



バァアァアァァアン・・・・!!

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作者名:白文鳥 | 作成日時:2020年12月22日 23時

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