148話 作戦会議(1) ページ24
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数日後、俺達は門倉の部屋に来ていた。
門倉「次の新月の晩にのっぺら坊がいる房はここ・・・第四舎第六六房だ」
「ロシア人は違う建物にいる」
白石「俺の脱獄の鉄則としては新月に拘らずすべての音をかき消す嵐の夜なんだが・・・トンネルが川のすぐ側だ」
「雨とか川の増水で塞がれる危険がある。
今回はオレ一人じゃねぇしな・・・」
白石がアシリパとアンケシさんを横目に呟いた。
白石「誰にも気付かれないように侵入してアシリパちゃんとアンケシちゃんをのっぺら坊とロシア人に引き合わせ何事も起きなかったかのように静かに立ち去れば大成功だ」
土方「失敗すればここのトンネルはすぐに見つかりその瞬間に門倉はお尋ね者だな」
土方がそう笑うと門倉は頷いた。
門倉「この仕事に執着はありません。その時は土方さんにお供します。死んだ親父も喜ぶ」
キロランケが門倉に聞いた。
キロランケ「土方の爺さんと通じてる看守は門倉さんだけ?」
門倉「そうだ。集団脱獄事件をきっかけにほとんど看守は入れ替わった」
「制服を着ているが警備増強のために裏金で雇ったモグリの看守も大勢いる」
「夜中でも看守は樺戸監獄の2倍はいるだろう。侵入して見つかれば容赦なく撃ってくるぜ」
静かに話を聞いていた杉元がポツリと呟いた。
杉元「もし・・・のっぺら坊がアシリパさんの父親だとして・・・連れ出すのは難しいのか?」
「それと・・・ロシア人がアンケシさんの父親だった場合も・・・」
アシリパとアンケシさんの瞳が揺らいだ。
門倉「のっぺら坊は片足の腱を切られているのでいつも看守に支えられている」
「ロシア人の方は右側の腕がまるごとない。ひとりではロクに行動もできん」
何か策がないのかを言おうとしたとき門倉が続けた。
門倉「連れて逃げるのはかなり困難だが不可能では無い」
不可能じゃないのなら・・・。
アンケシ「ひとつの判断を見誤ると余計な死人が出てしまう。何も出来ない者は足手まといだ」
アンケシさんがキッパリと言い放った。
―つまり、アンケシさんの考えは決まっている。
アシリパの方も、それに頷いた。
アシリパ「危険を冒してまで連れ出す必要はない。父が本当にのっぺら坊なら・・・」
土方「・・・・・そこで盗み聞きしとらんで上がってこい」
土方がアシリパの言葉を遮りトンネルのほうを向いた。
そこでは百が顔を覗かせていた。
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作者名:白文鳥 | 作成日時:2020年12月22日 23時