147話 ウタリアン(2) ページ23
アンケシ「貴方は確かに人間だけど・・・自信がないのならアイヌとして生きればいい」
A『・・・・・え?』
アンケシ「知ってるか?アイヌとは人間という意味なんだ」
Aは私の言ってる意味がわからないようでポカンと何とも間抜けな表情を向けてきた。
アンケシ「・・・だから、その」
「アイヌとして【人間】として生きれば貴方も少しは自分を好きになれる」
A『・・・・・・俺アイヌ嫌いだよ』
アンケシ「本当に?私の知ってる貴方はアイヌの人々を憎んでいるようには見えなかった」
Aは俯き、黙ったままシロを撫で続けた。
アンケシ「私はアイヌとして、人間として自分に誇りを持って生きることを誓った」
A『・・・俺には難しいよ。手遅れだし』
アンケシ「いいや。まだ間に合う。貴方の人生はまだちゃんと始まってないんだろうから」
私は彼の手に自分の手を重ねた。
じんわりと体温が伝わってきた。
アンケシ「もし・・・決意が固まったらアイヌとして一緒に生きないか?」
「貴方の知らない私達の世界をもっともっと教えてやる!」
A『・・・ははッ。俺、物知りだよ?』
アンケシ「いいや!きっと驚くことがいっぱいある」
Aは私の言ってることを冗談として受け取った。
それでも良いから・・・ほんの少しでもこの男の心に何かが灯ればと思った。
Aがポツリと呟いた。
A『もし、そうなるとしたらアンケシさんが名前つけてよ』
『アイヌなのに松崎Aは可笑しいだろ?』
アンケシ「・・・あぁ!いいぞ。とびきりのものをつけてやる」
『【罪を償いきれなかったものは、自分の帰る場所を見つめることが出来ず俺みたいに彷徨っている】』
『【『独りは怖いけど・・・こういう人間は独りでいるほうが誰かを傷つけなくて済む】』
そうだ。私は・・・気づいてほしい。
貴方には佐一やアシリパに白石。
百にキロランケニシパ。
そして・・・私がいること。
アンケシ「ウタリアン」
A『・・・・うん?』
アンケシ「貴方は決して一人じゃない。
沢山の仲間に囲まれている。それは・・・アイヌとして生きても変わらないであって欲しい」
「【沢山の仲間に囲まれた】仲間が多いという意味だ」
「どうだ?良い名前だろう?」
少しの沈黙のあと、Aがポツリと呟いた。
A『・・・悪くないかもね』
僅かに潤んだ瞳で、微笑みを浮かべていた。
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作者名:白文鳥 | 作成日時:2020年12月22日 23時