137話 奇襲の音（2） ページ47
杉元「え？まだゆっくりすればいいじゃん」
A『十分堪能した』
尾形「烏の行水だな」
キロランケ「烏だけに」
ゲラゲラと笑うコイツらを余所目に俺は脱衣所に向かった。
もちろん、シロも当然のように建物に入ってきた。
A『・・・いたか？盲目の盗賊は』
シロが「ガァ」と鳴いた。
ふと自分の身体の傷をまじまじと見つめる。
普段はあまり気にしていなかったがあんまさんにああまで言われると矢張り不格好な見た目をしているんだと実感した。
ところどころに銃痕があり、刺し傷や切り傷までもがある。
まぁ・・・杉元よりは全然マシだけど。
「【Aが傷を負っても死なないのはこの世での役目がまだ残っているということだ】」
こんな俺にも生まれた意味があってそれを達成するために生きている。
・・・・はたして俺の役目とは何だろう。
守るべきものを最後まで守ることだろうか？
それとも、このまま地獄を生き抜いて殺戮を繰り返すこと？
この魂が地獄に堕ちるのをカムイは望んでいる・・・。
シロが俺の足元で毛づくろいをする。
神の遣いは白い動物だって和人の昔話にある。
この考えで行けばシロは神様が俺を見張るために送ってきた使い魔だし、アイヌの考えでいけばシロはカムイ自身で俺を見張っている。
俺がちゃんと天授を全う出来るのか監視しているんだ。
【不撓不屈】でいることは簡単ではない。
自分で自分を殺してようやく手に入れたようなものだ。
A『・・・天賦の才なんて貰ってるわけねぇだろ』
何食わぬ顔で俺を見上げるカムイの頭を撫でる。
甘えるように身体を擦り寄せ「ガァ」と小さな声で鳴いた。
そろそろアンケシさんのところへ戻ろう。
そう思ってズボンに足を通したとき・・・。
風呂場のほうが騒がしくなった。
シロが小窓から外にへと飛び出していった。
着替えてる暇は無さそうだから半裸のまま持ち込んでいた銃を手に脱衣所を後にする。
今更、女の目が――とか気にする必要は無い。
てかアシﾘパとアンケシさんは杉元のスギモトを見てるんだし、これくらいなんとも思わないだろう。
A『ちッ・・・・灯りを消されたか』
真っ暗で何も見えない。
シロが俺の隣に来ていることしか、感じ取れない。
都丹「こっちからは丸見えだぜ」
・・・盗賊が奇襲して来たということは何となく理解した。
いつから、見られてる？
俺は静かに銃を構えた。
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作者名：白文鳥 | 作成日時：2020年12月13日 20時
