131話 青い目（3） ページ32
インカﾗマッの話をアシﾘパとアンケシは静かに聞いていた。
インカﾗマッ「ウイルクは若い頃からアムール川流域の少数民族と共に帝政ロシアからの解放運動繰り広げ戦い・・・傷つき・・・北海道の小樽へ逃げてきました」
「当時すでに占いをしながら放浪していた私は・・・彼と毎日過ごしました」
「ウイルクは父親の影響で信仰はキリスト教でしたが私が教える北海道アイヌの信仰や土地のことや言葉」
「私達の食べるもの・・・すべて受け入れてくれました」
インカﾗマッは愛おしいものを思い出す眼差しで呟いた。
インカﾗマッ「戦いで傷ついたウィルクはこの土地で癒やされ北海道アイヌを愛していた」
アシﾘパ「・・・・・私とアンケシだって父がのっぺら坊だとは信じてないけど父からインカﾗマッの話は一度だって聞いたことないぞ」
「アンケシはそんな話私のアチャから聞いたことあるか？」
アンケシ「・・・いいや。そのような話は聞いたことがない」
アシﾘパがインカﾗマッを睨む。
アシﾘパ「父は私の母から【すべて教わった】と言っていた。お前の言うことはすべてが怪しい！！」
インカﾗマッが寂しそうに顔を伏せ、いった。
インカﾗマッ「たしかにアシﾘパさんのお母様は美しい人でした・・・」
そして、インカﾗマッの頬を涙が伝った。
インカﾗマッ「ウィルクにとっては私はまだ子供でしたから忘れちゃったかもしれませんね」
アシﾘパ.アンケシ「「・・・・・・・・・」」
アシﾘパとアンケシの脳裏に杉元とAの姿が浮かぶ。
アンケシ「・・・インカﾗマッカッケマッ」
インカﾗマッが涙を拭いながらアンケシを見る。
アンケシ「私のアチャの話は・・・ウイルクニｼパからはひとつも聞いてないですか？」
インカﾗマッ「アンケシちゃんのお父様・・・？」
アンケシが小さく頷く。
アンケシ「なにかひとつでもウイルクニｼパは北海道に渡ったとき言ってなかったんですか？」
「残された樺太アイヌやアチャたちのこと・・・少しでも」
インカﾗマッが少し間を開けて呟いた。
インカﾗマッ「ひとつだけ・・・彼はこう言っていました」
「【樺太には、自分の弟分が残っている。私の代わりに戦ってくれているのだ】」
「【ときが来るまで】」
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作者名：白文鳥 | 作成日時：2020年12月13日 20時
