第12話 ページ12
急いで走り出して、やっと見えてきた屯所に私はスピードを落とした。息はすごく上がってしまっていたが、歩みは止めなかった。自分の気持ちを少しでもわかって欲しい、その一心で。
屯所の入口からは話し声が聞こえて、私は屯所の塀に隠れ聞き耳を立てた。いけないことだとは分かっていたけど、足が動かなかったし、興味があった。
??「あのね、私は総悟の事が…好きなの」
この声はあのカフェで聞いた優香さんだった。私は「好き」という単語に胸がはねた。
もし、総悟がいいって言ってしまったら。私は怖くて目を閉じながらその会話の続きを探った。
総悟「残念ですがねィ、
俺には好きな人がいるんでさァ」
そう言った総悟の後に、優香さんが泣いている声が聞こえた。だから、お前には答えられねぇと。優香さんは私の真横を泣きながら走り抜けていった。
私は黙って優香さんを見ていた。走りながら泣く優香さんは、それだけ総悟が好きだったと語っていて。私はそれを見て、総悟とは違う胸の締め付けに襲われた。
総悟「あれ、Aじゃないですかィ」
私は塀に隠れていたが見つかってしまった。私は仕方なく塀から隠れるのをやめて、総悟を見た。どうしようもない、寂しさにかられた。総悟には好きな人がいる、それでも、自分の気持ちだけは伝えようと口を開いた。
総悟「さっきの…聞いてましたかィ?」
A「うん…」
総悟は私の声に重ねて、そう聞いてきた。私は驚いたが、首を縦に振ると総悟は少し笑って話し出した。
総悟「俺の好きな人は…
最近隣にずっといてくれて、
優しくて、
笑顔が可愛くて、
妹想いの、
今隣にいるあんたですぜ?」
そう、はにかみながら、照れながら私を真っ直ぐに見つめて言った。
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作者名:マロン | 作成日時:2018年11月5日 18時