▽08 ページ9
コン、コン、コン。ガチャ。
四回目ともなれば、もうドアを開ける手に迷いはない。ロナルドの予想通りに立っていた人物は、これまた予想通りに目を細めて微笑んでみせた。
「やぁロナルドくん、今日こそドラルクはいるかな?」
「残念ながら今日もいないぞ」
「おや、それは残念」
ふふ、くすくす。
おどけるように肩をすくめたAが漏らす、上品な笑い声。ぼうっとそれを聞いていたロナルドは、ふと、自分が案外この吸血鬼に絆されていたことに気付いた。まぁ、多分これは親愛なので大丈夫だ。友人が増えるのはいいことだし。これは普通に友人に向ける感情で、合っている、はず。………合ってるよな?合っているということにしよう。
だから、もう少しAと話してみたくなったのはしょうがないことなのだ。ほら、友人と親睦を深めることは普通だろ。ロナルドは心の中で呟いた。
……ところで俺、なんでさっきから言い訳ばっかりしているんだろう。
内心首をひねって考えるも、結局、自分がAと仲良くなりたいと思っていることしかわからなかった。まぁ、わかんなくたって大丈夫だろう。
「あー、A、立ち話もあれだし、入るか?」
「おや、いいのかい?では失礼しようかな」
頷いたロナルドは手でソファを示す。Aは示されるがままソファに座り、ロナルドもその対面にあるソファに座った。
「………」
「………」
(ヤベェ、何話すか考えてなかった)
ロナルドは自分の無計画さに頭を抱えたくなった。誘ったはいいがその次がわからない。
だって自分で仲良くなりたいと思って他人を誘ったことなんて初めてなのである。友人であるカメ谷も半田もショットやサテツも、いつの間にか仲良くなっていたクチだ。話題を意識したことなんてあまりなかった。
というかそもそも人間と同じ話題でいいのだろうか。好きな食べ物は?とか血に決まってんだろ。好きな血液型はなんですかって訊けばいいのか?それもそれでどうだろうか。吸血鬼と人間ってかなり文化が違うし、何か失礼なことをしでかしてしまうかもしれない。しかしそれを恐れていたら仲良くなれない。どうしよう。
ぐるぐるぐる、ロナルドの思考と視界が回る。
それを正常に戻したのは、Aの軽い一言だった。
「あぁそうだ、手土産があってね」
Aはおもむろに指を鳴らす。驚いて瞬きをすると、先程まで何をなかったはずの机の上に、白い紙袋が鎮座していた。
(救世主か……?)
37人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:どるどる | 作成日時:2022年2月6日 22時