「 惚 れ さ せ 屋 」佐野玲於

stage 9 ページ9

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なんでだろう。

佐野さんが、優しい

いつもなら私のことなんて見向きもしないで真っ先に帰っちゃうのに

わざわざ戻って手伝ってくれるなんて
明日は雨でも降るのだろうか。





玲於「 いつもこんなことやってんの 」

「 はい、新人なので 」





… ってか、なんで私たちこんな普通に会話してるの

さっきだって、私がうっかりミスしてたとこ見られて思いっきり笑われたし。

ってことは私のこと見てたのかな？

なんか調子狂うんだけど






玲於「 なんかさ、ちゃんと話すの初めてじゃね 」

「 … 確かに、そうですね 」


玲於「 俺ら確か同い年っしょ？何年生まれ？」

「 95年です 」


玲於「 あ、俺早生まれだから96だわ 」





うん、知ってるよ。

昨日改めて佐野さんのことをウィキペディアで調べてみたもん

ターゲットの事は下調べしとかないとね

って私は案外乗り気じゃんか。佐野さんの事を惚れさせるなんて到底無理なのに


なんでだろう、もしかして … もしかするかも。






「 じゃあ佐野さん、ネズミ年ですね 」

玲於「 うん。赤城さんはイノシシか。イノシシっぽいわ確かに 」


「 … それどういう意味ですか 」


玲於「 なんか、真っ直ぐで猪突猛進。みたいな 」





なんじゃそりゃ

私ってそんなに猪突猛進かなぁ、自分じゃ分からないけど。
でも確かに決めた事は曲げたくないっていうか

やりたいこと真っ直ぐ突き進むのは確か





「 佐野さんもネズミっぽいですよ 」

玲於「 小せえって言いたいの？」


「 ふふ、笑 」







なんでこんなに会話が弾んでるんだろう

しかも結構どーでもいい話なのに、ちょっと楽しい自分もいるの

あんまり近くで直視したことなかったけど
佐野さんて、やっぱり可愛い顔してるよね

肌も白くて綺麗だし。ずる






玲於「 でも赤城さんより俺大きいから。ほら 」

「 知ってますよ、私いま見上げてますもん 」





涼太くんくらいの身長だったら、普通に会話するだけで自然と上目遣いになるんだけどな

佐野さんは頑張れば目線同じになっちゃうから

あんまり可愛らしくは見えないかも、なんてね


あ、佐野さんて瞳の色茶色いんだな … 私と一緒だ。

って日本人はほとんどそうか






玲於「 … っ、」

「 どうかしました？」


玲於「 … おちびちゃん 」

「 うわ、ひどい 」





怒ったふりして態とらしく唇を尖らせてみる

こんなぶりっ子佐野さんは嫌いかな、なんて思いながら上目遣いする





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