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あの当時のAさんは、一言で言えば『消えそう』だった。

《───…ちっぽけだった日々まぶしいその笑顔に
意味のない焦り感じ目を逸らしたけど…───》

歌詞に合わせてつい、と下へ逸らされた視線。
白く透き通る肌と俯き加減の憂いを帯びた表情に、体調のせいか掠れ気味の歌声が重なり、今にも消え入りそうな儚さを纏う。

その姿に一瞬で目を奪われた。

「天使がいる、って、初めて思いました」

比喩でも冗談でもなく、本気で。
俺の目にはそれぐらい神々しく見えた。

「天使って、すごい例えやな」

「そう、っすね……なんて言ったらいいんですかね、浮世離れしてると言いますか……」

「なんか分かる。あの頃のAちゃん、ちょっと人っぽくない感じは確かにあった」

「そうなん？」

俺の話に深く頷いて賛同する樹。
龍友さんはそれを聞いて不思議そうな顔をしている。

「はい、なんとなくですけど。今より人間味が無いっていうか……白くて細くてちっちゃくて、瞬きしてる間にフッて消えそうな感じはありました」

「それがまた良い味出してたんだよなあ～。儚げな感じがめちゃくちゃ綺麗で……」

樹と翔平も当時を思い出して楽しそうに語っている。
Aさんを昔から知る2人ですらそう感じていたのだから、俺の感覚は間違っていなかったらしい。

『私、そんな風に見られてたんだ』

「儚げ、なあ」

「あの頃のAのビジュが好きって人、今でも結構居ますよ」

「ほえ～……」

『そうなんだ、意外』

俺たちの話を興味津々で聞いてくれる龍友さんとAさん。
何を隠そう、俺も翔平の言う “あの頃のAさんのビジュアルが好きな人” の内の1人だ。

「Aさんはいつも綺麗ですけど、あの時のAさん、俺が今まで見てきた中でもダントツで、めちゃくちゃ綺麗でした」

『……そう』

複雑そうな顔をするAさん。
体調不良のピークだったことを考えると、センシティブなところに触れすぎたかもしれない。

「すいません、コンディション悪かった時期なの分かっててこんなこと言われんの、良い気せぇへんとは思うんですけど……」

『そんなことない、嬉しいよ。ありがとう。
命削ってステージ立った甲斐があったよ』

Aさんのその一言に龍友さんが苦い顔をする。

「……確かにあれは、文字通り『命削って』たな」

「あん時、相当エグかったっすよね」

「いつ倒れるかってヒヤヒヤしたもんなあ」

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