*Only winner* (ページ33)

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◆ありのままの私でページ33

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「Aってさ、衣装、結構スカートとか露出激しめのやつとか多いよね」

投げかけられた言葉の意図が分からなくて、一瞬、静寂が流れた。

『……まあ、そうだね』

「嫌じゃないの？」

『……え、なんで？』

「なんか、何となく」

『なにそれ』

目の前にいる男、長谷川慎が何を言いたいのか、いまいち掴めない。

私の衣装、特に最近は圧倒的にスカートが多いし、曲調によっては露出の多い衣装も珍しくないけど……
嫌って、どういうことだろう。

『まこ、私がそういう格好するの嫌なの？』

「俺？なんで？Aの衣装なのに」

『だって、嫌じゃないのとか言うから』

「Aが嫌じゃないのって意味で聞いたんだけど」

……なんとなく、噛み合っていない気がする。

『……まこが何言いたいのかよく分かんないけど、嫌だと思ったことは別にないよ』

「1回も？」

『うん』

「意外。1回ぐらいありそうなのに」

『……さっきから、何の話？』

いよいよこの男が何を言いたいのか分からなくなってきて、直球で聞き返す。

「なんか、女の子扱い、嫌だと思ったことないんだなあと思って」

空気が凍る音がした。

今はTRIBEのツアーのリハーサル中で、周りには先輩方も後輩もスタッフさんたちも、大勢の人が居る。
もちろんそこにはGENEのメンバーも。

いろんな人の耳に入りやすい場所でずいぶんストレートな聞き方するなあ、なんて感心する私をよそに、周りの人たちは物凄い顔をしている。
まこの顔越しに見えたNAOTOさんの表情なんて、この世のものとは思えなかった。

まこからしたら純粋な疑問でしかなかったんだろう。
けれど、何となく空気が変わった気配を感じ取ったのか、まこの表情まで不安そうに歪んだ。

「……聞いたらダメなこと聞いた？」

『いや？全然』

「けど……」

『気にしないでいいよ。みんな勝手に触れなかっただけで、私が触れないでって言ったわけじゃ無いから』

「……なら、いいんだけど」

そう、そうなのだ。
私がこの件……すなわち、 “女の子扱いされること” に関して深く触れてくれるなと言ったことは、ただの一度も無い。
みんなが気を遣って、暗黙の了解みたいに誰も触れてこないまま、いつの間にかパンドラの箱状態にされていた。

おかしな話だなあ、と思う。
衣装やらメイクやら演出やら、様々な場面で、まこの言う "女の子扱い" を当たり前のようにするくせに、大っぴらには触れてこないのだから。

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