【銀魂】睨まないで女医さん

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家に変人が訪れてから数時間。
私は記憶を消そうと必死だった。


消そう消そう、忘れようとするたびに
あの男の昂った声が聞こえたような気がして寒気がする。

あまりにも衝撃的だったからだろう。
無理に忘れようとしても逆効果だな、と感じた。


そうだ、何か他のことをして気を紛らわしてみよう。
別のことを考えていれば一時的にでも忘れられるはず。


思い立ったが吉日。幸いにも外は曇り。
もうすぐ昼時になるから、いつもより手間をかけて昼食でも作るとしよう。


先程まであの男がいたこの家にずっと身を置いておくのもいけない。
そういえば最近晴れ続きだったこともあり、しばらく外に出ていなかった。

(あの男を捨てる為に外に出たのは数えないようにしよう)


外に出る気分転換も兼ねて、昼食の材料でも買ってこよう。


『……ふぅ…』


一度息を吐いてから、身支度を整えて私は外へ繰り出した。







—————————





焦げた匂いが通り過ぎていく
少し熱を帯びた風が頬を撫でる。


『火事…？』


角を曲がった先に見えるはずのスーパーが
火事で燃え、一部の柱や壁だけを残していた。


辺りには沢山の人と数台の消防車とパトカー。
め組の人も何人かいる。


｢また火事ですって、最近は物騒ねぇ…｣
｢残念だわ…今日は特売だから張り切って来たのに、今日のご飯どうしようかしら｣


『………。』


　“また”火事ですって…


最近は火事が何度か起こっているらしい。
どうにも今日の私は運がないようだ。

仕方ない。冷蔵庫にあるもので適当に作るとしよう。
踵を返した私を、聞き覚えのある声が引き留めた。



｢…A？お前、どうしてこんな所に｣

『副長さん…』



振り返って見れば真選組の隊服ではなく
私服であろう着流しを着たあの副長がいた。



｢お前と町中で会うなんて初めてだな｣

『火事現場で会うなんて、…私は気乗りしないけれど…』



｢…昼飯は食ったか？｣


『…？…まだ、だけど…』


｢立ち話もなんだ、いい店を知ってる、一緒にどうだ？｣


どうやら昼食のお誘いのようだ。
こんな場所で何を呑気に…とも思ったが、彼は今仕事中ではない。

折角の機会だ、このまま家に帰って料理をするより
たまには外食でもしてみるか…



『…副長さんのお誘い…断るわけには、いかないから…』


｢そうか、決まりだな｣


こっちだ、と言った彼の背中
彼と肩を並べて歩くのも、初めてだなぁ、とこの時思った。

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