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絶つ ページ17

『20XX年 ○月✕日 22:03



おい、どこにいるんだ。



置いてあった荷物全部どこにやったんだ。



何かあったのか?




.......聞いたら掛け直してくれ、頼む』







『20XX年 ○月✕日 13:24



なあ、頼むよ。
出てくれ。



お前に何かあったんじゃないかって.......



心配だ.......また掛ける』






『20XX年 ○月✕日 20:19




嫌われるようなことしたか?





.......俺の愛は、足りなかったか?』






『20XX年 ○月✕日 21:36




会いたい.......A




好きだ、愛してる』






はじめから分かっていた。



彼が私のことを一番に想ってくれていたことなんて。




私が家から飛び出て二日後、こんな調子でボイスメールが送られていた。




それからは仕事の合間を縫ってか、二日に一回、五日に一回の頻度で送られてきた。




もちろん返すことは無かった。




聞くだけで辛かった。





一ヶ月が経って私は予定通り会社の企画に参加して、渡米をしたのだった。





彼からは頻度は少なくなったものの週に一回、私のことを気にかけていた。





忘れられない、忘れたくない思い出に終止符を打つ時は訪れた。




仕事仲間の一人が酒に酔った勢いで泣きながら訴えてきた。





「好きっていう感情は相手が完全に自分のものになってない最初だけにあって、最後には消えてるんだよ。自分のものになると満足して愛が薄れていくんだ。愛が薄れる時間は人それぞれだから、喧嘩とか浮気とか別れ話が生まれる。あとは.......日本で言うところの諸行無常みたいなやつさ。永遠不滅の愛はこの世に存在しない。俺は変わり者だけどよ、こういう考えも否定はしないさ」





私が抱く彼への想いは仕事仲間が言うように変化してしまうのだろうか。
愛は消えてなくなってしまうのだろうか。





自分の力で絶つことの出来ない感情を倫理的な考えで葬ろうとする自分がそこにいた。

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作者名:榊 リョウ | 作成日時:2019年8月13日 19時

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