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僕はずっとAが好きだったし、さっき言ったように絶対に護ると決めている。降谷になってもらって、いつか松七五三家にも師匠と奥さまにも挨拶に行きたい。僕が寿命で死ぬときは隣にいてほしいし、おばあちゃんになって寿命で死んでもらわなきゃ困る。毎日Aのつくったご飯が食べたい。
零くんは上記のようなことをつらつらと並べ、最後に「Aが嫌なら強要するつもりはないが」と添えて、しゅん……と落ち込んだ。
ダメ……? と涙を湛え見上げてくるその様はさながら拾ってと訴える捨て犬のようで、ここで断ってはあたしが最低な人間のレッテルを貼られる気がした。断る理由も何もないが。
ご存じだろうか。あたしはとにかく零くんの押しに弱い。十四才の彼はあまり甘えるということをしてこなかったから、たまにくる甘えはとにかくかわいくて、何でも叶えてやりたくなるのだ。
つまりそういうこと。
「……喜んで」
「本当か?! Aならそう言ってくれると思ったんだ!」
完璧にハメられた。
一瞬で笑顔になり、湛えていた涙なんて存在しなかったかのように振る舞う零くん。捨て犬からいたずら好きのやんちゃな犬に早変わりした。
零くんはあたしの両手を握り、満面の笑みでぶんぶん振った。ちょっと安室透が入ってる。さてはこの子、零くんが喜んでるとあたしも喜ぶってことわかっててやってるな?? 計算高いぞ安室透……。
急にキリッと真面目な顔になる。
「僕は潜入中の組織を壊滅させるまでAとずっと一緒にはいられない。壊滅させてもゼロだから結婚は反対されるかもしれない。きっと説得してみせるから、それまで待っていてくれるか?」
真剣に目を見つめてくれる零くんがかっこよくて、頭がくらくらする。いつもかわいかったのに、成長してこんなにかっこよくなったなんてもうこれギルティだろ。
「か、……」
「か?」
「かっこっ、戸籍! あたし戸籍ないから、結婚するまでにほしいです……!」
いや何を言っているんだあたしは、かっこいいって言えないからってそんな逸らし方あるか。零くんも顔を背けないでくれ。……なんか電話し始めたんですけど、え、風見さん? 急ぎで戸籍をつくれ? 何職権濫用しているんだ零くん。そんなすぐに戸籍をつくれるわけ……。
「これで今すぐにでも結婚できるな」
つくれたのかよ。
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えりんぎ苺(プロフ) - よるさん» レス遅れて申し訳ありません、気づきませんでした……! 主人公をできるだけフツーの女の子にしたかったので、それが伝わって嬉しいです。十四才零くんとのやり取り書き足りないんですよね(笑) 完結させて頂きありがとうございます。コメントありがとうございました! (2020年6月14日 18時) (レス) id: b6e0dc5b12 (このIDを非表示/違反報告)
よる - ちょっと文字数が足りなかったので…完結お疲れ様でした! (2020年6月5日 1時) (レス) id: e10e6d9ba2 (このIDを非表示/違反報告)
よる - めっちゃ面白かったです!とくに主人公が凄く個性が強いわけでもなく、普通の人って感じがしてとても共感するし、読みやすかったです!(語彙力少なめなので伝わってると嬉しいです) 14歳の零くんと主人公のやりとりが鮮明にわかり微笑ましい気持ちになりました笑 (2020年6月5日 1時) (レス) id: e10e6d9ba2 (このIDを非表示/違反報告)
えりんぎ苺(プロフ) - ゆるり。さん» 寂しく思ってくださるなんて……! 繊細で優しい書き方だなんて初めて言われました。すごく嬉しいです。こちらこそご愛読いただきありがとうございました。ぜひぜひ次もお付き合いください。コメントありがとうございました! (2020年5月31日 8時) (レス) id: b6e0dc5b12 (このIDを非表示/違反報告)
ゆるり。(プロフ) - 完結おめでとうございます!この作品が更新されるのが楽しみで楽しみで、完結してしまったのが寂しいくらいです…。繊細で優しい書き方で、とてもわくわくしました。素敵な作品をありがとうございました!次も付いていきます! (2020年5月31日 7時) (レス) id: f1881e43ef (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:えりんぎ苺 | 作成日時:2020年5月25日 21時