あの日、未来のトリプルフェイスを拾った。【名探偵コナン】

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泣きそうになっているのを彼に知られたくなくて、どんどん零れていく涙を必死に拭う。それでも涙は止まってくれなくて、彼が俯いているのをいいことに、放っておくことにした。

彼はあたしの問いかけの答えを一生懸命探してくれているようだった。考え込み、口を開きかけては、また噤む。零くんの答えなら、どれだけ時間がかかろうと待っていよう。



「…………Aと」

「うん」

「一緒にいたいって、思ったから。……僕が護りたいって、思ってたんだ」

「そっか」



彼の口から紡がれた言葉は、あたしにとって思いの外うれしい言葉で。さっきまで悲しくて流れていた涙が、今度はうれしさで流れる。

ずっと俯いていた零くんが顔を上げ、あたしの顔を見て驚愕した。涙でぐちゃぐちゃになった顔の輪郭を両手で包み、親指で目を拭う。「どこか痛いのか」とか「嫌なことでもあったのか」と的外れなことを訊いてくる彼に首を振り、「嬉し泣き」と囁く。

うれしなき、と間抜けた顔で繰り返す零くんがおかしくて、あたしはぐちゃぐちゃな顔を破顔させた。



「あのね、零くん」

「うん」

「零くんがそんなふうに思ってくれてて、すっごくうれしいよ」

「……うん」

「あたしも一緒。零くんのことが大好きで、一緒にいたい」



ゆっくりゆっくり伝えるあたしの気持ち、その一つ一つに零くんは相槌を打った。律儀な性格も変わっていない。十四才だろうと二十九才だろうと、安室透だろうと降谷零だろうと、零くんは変わらない。

生真面目な顔で続きを待つ零くんに、「わからない？」と続けた。



「あたしも一緒なんだよ。零くんを護りたいって、零くんとおんなじ気持ちなの。だからこっちの世界に来たの。零くんに会うために、零くんを護るために」



ぱちり、と零くんが瞬きをした。ぱち、ぱち、とゆっくり何度か繰り返したあと、みるみるうちに零くんの蒼い瞳に涙が溜まる。ぽろりと大粒の涙が一粒零れてようやく、零くんが動き出した。

そっと抱き寄せられ、ぽんぽんと背中を撫でられる。存在を確かめるように何度も何度も撫でられていくうちに、また透明な血が目から溢れてきた。

零くんに伝わった。背中に腕を回して、彼の温もりを抱きしめる。



「……零くんと一緒に死なせてください」

「僕がAを死なせない。僕と死ぬなら、おばあちゃんになるまで待たないとだな」

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