冗談に聞こえない ページ30
女子高生三人組やコナンくんと連絡先を交換し、ジョディさんにもらったお小遣いで全員分の代金を支払い、ポアロを出て工藤邸に戻る。零くんは他のお客さまの対応に追われていた。コナンくんは蘭ちゃんに夕飯までには戻ると告げ、あたしと一緒に来ている。
工藤邸では、夕飯の支度をしていた赤井さんが出迎えてくれた。ジョディさんはまだ出かけているらしく、夕飯もいらないと言っていたそうだ。仕事があるのだろう。FBIの捜査官さんはみんな多忙なのだ。赤井さんも例外じゃない。
コナンくんは書斎から本を持ってきて、夢中になって読んでいる。子供のころから活字に触れるのは素晴らしいことだ。ぜひとも続けてほしい。もっとも、彼の中身は子供じゃないのだが。
あたしは、キッチンに立つ赤井さんの手伝いをしながら彼と雑談している。
「彼には会えましたか?」
「会えました。ハムサンドも食べられたし、かわいいお友達が三人できたし、大満足です」
「それはそれは。ところでさっきから思っていたんですが、手際が良すぎやしませんか」
「プロだったので。あ、ここでチョコレートを入れると美味しいですよ」
「なるほど……勉強になります」
他にも隠し味として蜂蜜や味噌がおすすめ、と言ってぽいぽいと入れていく。作っているのはカレーだ。いつも一人で食べているらしいがお裾分けするし、今日はあたしがいるのでカレーという選択は無難だ。さすがFBI、よく考えている。
彼が煮込んでくれている間に、あたしはちゃんと許可を取って冷蔵庫の中身を見て、副菜を決める。コールスローサラダにしよう。きっと美味しい。
サラダをつくり、コーンスープとデザートもつくる。普段一人暮らししているとは思えないほど充実した冷蔵庫でした。FBIは栄養も考えているのか。さすがFBIだ。
「美味しそうですね」
「味見します?」
「え。むぐ」
スプーンでスープを掬い、赤井さんの口に突っ込む。文句を言いたげにしていたが、スープを飲み込んだあとは何も言わなかった。文句も一緒に飲み込んでしまったようだ。ラッキー!
「味も美味しい。これなら毎日でも店に通いたくなるな」
「あたしが勤めてたの料亭ですけどねえ」
「金なら腐るほどあるさ。だが、まあ……君を嫁にもらえば良い話か」
ふむ、と赤井口調で頷く赤井さん。冗談に聞こえないからやめてください。
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えりんぎ苺(プロフ) - よるさん» レス遅れて申し訳ありません、気づきませんでした……! 主人公をできるだけフツーの女の子にしたかったので、それが伝わって嬉しいです。十四才零くんとのやり取り書き足りないんですよね(笑) 完結させて頂きありがとうございます。コメントありがとうございました! (2020年6月14日 18時) (レス) id: b6e0dc5b12 (このIDを非表示/違反報告)
よる - ちょっと文字数が足りなかったので…完結お疲れ様でした! (2020年6月5日 1時) (レス) id: e10e6d9ba2 (このIDを非表示/違反報告)
よる - めっちゃ面白かったです!とくに主人公が凄く個性が強いわけでもなく、普通の人って感じがしてとても共感するし、読みやすかったです!(語彙力少なめなので伝わってると嬉しいです) 14歳の零くんと主人公のやりとりが鮮明にわかり微笑ましい気持ちになりました笑 (2020年6月5日 1時) (レス) id: e10e6d9ba2 (このIDを非表示/違反報告)
えりんぎ苺(プロフ) - ゆるり。さん» 寂しく思ってくださるなんて……! 繊細で優しい書き方だなんて初めて言われました。すごく嬉しいです。こちらこそご愛読いただきありがとうございました。ぜひぜひ次もお付き合いください。コメントありがとうございました! (2020年5月31日 8時) (レス) id: b6e0dc5b12 (このIDを非表示/違反報告)
ゆるり。(プロフ) - 完結おめでとうございます!この作品が更新されるのが楽しみで楽しみで、完結してしまったのが寂しいくらいです…。繊細で優しい書き方で、とてもわくわくしました。素敵な作品をありがとうございました!次も付いていきます! (2020年5月31日 7時) (レス) id: f1881e43ef (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:えりんぎ苺 | 作成日時:2020年5月25日 21時