＊ ページ8
まあいろいろありながら彼のための買い物は終わった。三時間弱かかった。こんなに買い物に時間がかかったのは初めてだ。
お昼ご飯は途中店に入って食べた。あたしがつくったほうが美味しいと思う。いや何に張り合ってるんだあたしは。
「いっぱい買っちゃったから、荷物家に入れるの大変そうだよね」
「全部持って歩こうとしてましたよね」
「ちょこちょこ車に置きに行くなんてめんど……んん、少年が言ってくれなかったら大変な思いをするところだったー！」
じとり。少年に向けられる非難の目。それはお世話になるお姉さんに向ける目じゃないような？ でもどんな目でも受け止めますだって推しだもの。みつをっぽくなってしまった。
そろそろ帰ろうか、と少年に声をかけると、はい、とだけ帰ってきた。
……。
「何か欲しい？」
「え？ いえ、特には」
「遠慮しないで。きみはお金かかるのに不満そうだけど、これからはお金かけてあげられないの」
「え……」
「あたし明日からは仕事あるし、構ってあげられないんだ。学校にも通わせてあげられない。戸籍あるかわからないからね。うちなんにもないから一人はつらいぞ」
冗談めかして言うと、少年はしばらく視線を彷徨わせて、控えめに切り出した。
「……。…………じゃあ、本がほしいです」
「了解！ じゃあ本屋さんに寄って帰ろう」
ショッピングモール内の本屋に少年を連れていく。わりと大きめの本屋だ。少年は目を輝かせて、きょろきょろ本を見て回る。かわいい。
あれもいい、これも読みたいと悩んでいる少年に「四、五冊選んどきなよ」と声をかけて、あたしは本屋を出てアクセサリーショップに向かった。
通りがかった時に、いいな、と思ったシンプルなロケットペンダント。金の縁に、青い宝石がきれいだ。中に写真が入れられる。あたしには似合わないけど、彼には着けてほしいと思った。
「彼氏さんにプレゼントですか？」
にこにこ笑顔の店員さんに訊かれて、「彼氏じゃないですけど」と苦笑を返した。
「大切な人、ですかね」
「素敵ですね。実はこのロケット、限定品で……高めなんですけど、サービスしちゃいますよ」
「それはありがたいです！ 彼、あんまり高いと遠慮するので」
店員さんにロケットをちょっと安くしてもらって購入した。喜ぶかな、と緩む頬は抑えられなかった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 572人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
あの日、未来のトリプルフェイスを拾った。【名探偵コナン】 あの日、未来のトリプルフェイスは拾われた。【名探偵コナン】 2.原作の知識を与えられたからには全力で関わりを拒否します。【ヒロアカ】もっと見る
「名探偵コナン」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
えりんぎ苺(プロフ) - バッグ・クロージャーさん» 面白いと言っていただけて嬉しいです……！ 楽しみにしていただいているので、更新頑張らなくっちゃですね。コメントありがとうございました！ (2020年5月25日 16時) (
レス) id: b6e0dc5b12 (このIDを非表示/違反報告)
えりんぎ苺(プロフ) - ひかりさん» 面白いと言っていただけて嬉しいです。すぐに反応していただけるとは……わたしは幸せ者ですね！ 更新頑張ります。コメントありがとうございました！ (2020年5月25日 16時) (レス) id: b6e0dc5b12 (このIDを非表示/違反報告)
バッグ・クロージャー(プロフ) - すっごく面白かったです！更新楽しみにしてます！ (2020年5月25日 16時) (レス) id: 09ffad4c5f (このIDを非表示/違反報告)
ひかり(プロフ) - めちゃ面白いです！さっき更新された話もまじ良かったです！ 更新待ってますっ！！ (2020年5月25日 16時) (レス) id: 2b9098a683 (このIDを非表示/違反報告)
えりんぎ苺(プロフ) - サクラさん» 面白いだなんて、すっごく嬉しいです！ 零くん視点の予定はなかったのですが、もしお待ちいただけるのなら、完結後に番外編として書かせていただきたいのですが、よろしいでしょうか？ コメントありがとうございました！ (2020年5月25日 13時) (レス) id: b6e0dc5b12 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：えりんぎ苺 | 作成日時：2020年5月21日 19時
