ギターと幼馴染み ページ38
月曜日の夜、つまり昨夜のことである。仕事……というべきか修行というべきか最近わからなくなってきたが、とりあえず仕事が終わり、いつも通り師匠と奥さまに挨拶をして帰ろうとしたところ、師匠に声をかけられた。
「昔の友達にギターもらったんだけど弾けなくて。Aちゃんいる?」
「ギター?! うわめっちゃカッコイイ! ほしいです!!」
こんな感じで話はまとまり、お古のエレキギターをもらってきた。
ギターを抱えて家に入った瞬間「弾けないだろ」と零くんに呆れられたが、ナメないでほしい。あたしは零くんがギター弾けることを知っていてもらってきたのである。
そして定休日の今日、試しに零くんに弾いてもらうことにした。
「チューニングとメンテナンスはしてあるって」
零くんは頷き、ギターを構える。
一瞬何が起こったかわからなかった。街中でよく聞くラブソングが流れてきて、お隣さんが音楽でもかけたのかな、と。零くんが弾いていると気づくのはその二秒後のことである。
一通り演奏を終えた零くんは、ぽかんと大口を開けたまま固まるあたしを見てクスクス笑った。
「すっっごいねえ零くん! プロ! プロだよ!!」
「大したことない。Aもちょっと練習したらできるよ」
「はぁあー?! 初心者がちょっとの練習でこのレベルまでたどり着けたらギタリストは仕事にならないっての! 嫌味か!」
「くらえー!」と叫んで零くんに飛びかかる。両手で髪をぐしゃぐしゃに乱してやった。零くんは手櫛で髪を整え文句を言う。そのわりに笑顔だ。ツンデレ。
あたしもコードをいくつか教えてもらったけれど、零くんのようにきれいな音は鳴らない。最後に雑音ばかりのGコードを鳴らして、ギターを零くんに返した。
「このギターはネックが太いし、Aは手が小さいから雑音が鳴るのは仕方がないな」
「フォローありがとう。零くんはどっかでコンサートとかしてたの?」
「ヒロと二人で演奏するくらいかな。ヒロはベースなんだ」
「出たよヒロくん。零くんはハイスペックだけど、ヒロくんもなかなかハイスペックだよね。幼馴染みって似るんだなあ」
「ヒロは僕と違って喧嘩っ早くないけど」
零くんが目を伏せて肩を竦める。そこはあたしとおんなじだよ、と言うと、そんなおそろい嬉しくないなと言いながらもうれしそうな顔をした。
570人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
あの日、未来のトリプルフェイスは拾われた。【名探偵コナン】
2.原作の知識を与えられたからには全力で関わりを拒否します。【ヒロアカ】
もっと見る
「名探偵コナン」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
えりんぎ苺(プロフ) - バッグ・クロージャーさん» 面白いと言っていただけて嬉しいです……! 楽しみにしていただいているので、更新頑張らなくっちゃですね。コメントありがとうございました! (2020年5月25日 16時) (レス) id: b6e0dc5b12 (このIDを非表示/違反報告)
えりんぎ苺(プロフ) - ひかりさん» 面白いと言っていただけて嬉しいです。すぐに反応していただけるとは……わたしは幸せ者ですね! 更新頑張ります。コメントありがとうございました! (2020年5月25日 16時) (レス) id: b6e0dc5b12 (このIDを非表示/違反報告)
バッグ・クロージャー(プロフ) - すっごく面白かったです!更新楽しみにしてます! (2020年5月25日 16時) (レス) id: 09ffad4c5f (このIDを非表示/違反報告)
ひかり(プロフ) - めちゃ面白いです!さっき更新された話もまじ良かったです! 更新待ってますっ!! (2020年5月25日 16時) (レス) id: 2b9098a683 (このIDを非表示/違反報告)
えりんぎ苺(プロフ) - サクラさん» 面白いだなんて、すっごく嬉しいです! 零くん視点の予定はなかったのですが、もしお待ちいただけるのなら、完結後に番外編として書かせていただきたいのですが、よろしいでしょうか? コメントありがとうございました! (2020年5月25日 13時) (レス) id: b6e0dc5b12 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:えりんぎ苺 | 作成日時:2020年5月21日 19時