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大声は出すが、師匠は切り替えの速さで有名だ。すぐにスンっと真顔に戻った。零くんはそれにさえ怯えている。やっぱり連れてくるべきじゃなかったか……。
「あー、従兄弟つったっけ? はいダウト」
「ダウトじゃないです真実です。真実はいつも一つ」
「いや嘘でしょ? こんなかわいい従兄弟がAちゃんにいるの?」
「そこは触れないでいただけますか。イギリス人のこの子の父親がめっちゃイケメンで、松七五三家の遺伝子はみんな負けてるんです」
「はあ、こんなきれいな顔の子が存在するんだね……やっぱ誘拐じゃ」
「まあでもこの顔だったらしたくなりますよね」
「それな」
もはやJKの会話だ。片方は高校生なんかとっくに卒業しているおじさまで、片方は高校生にならないまま青春を料理に捧げた残念な女だが。
師匠は一度手を洗って、拭きながらこちら(と言うか零くんに)に近寄る。すぐさま零くんはあたしの陰に隠れた。……勝った(優越感)。
「ありゃ、嫌われちゃったかな」
「ただの人見知りだとは思いますけど……、零くん、こちらあたしの料理の師匠。気軽に師匠って呼んでね」
「それAちゃんが言うことじゃないよね」
「は、はじめまして師匠さん……」
「うん師匠だよはじめまして〜〜〜〜〜っ!!」
この変わり身の早さである。普段からニコニコしていて優しい師匠だが、零くんに話しかけられてよほどうれしかったのかニコニコを通り越してニマニマである。誘拐犯のそれでちょっと怖い。
零くんはあたしの手をきゅっと握り、横に立つ。笑顔が効いて警戒は解けたようだ。やったね師匠。でもちょっとムカつく師匠。
「降谷零です。いつもAがお世話になってます……あれ?」
「零くんかぁよろしくね! 合ってるよ〜〜、いつもAちゃんには手を焼いててね〜〜〜」
「あっ、Aにお世話になってます!」
「気づいちゃった。……チッ」
「それは何に対する舌打ち???」
「Aちゃんがちゃんと世話焼いてるのがなんかムカついた」そうだ。弟子入りやめようか結構本気で考えた。
師匠は終始零くんにデレデレだったが、いつも通り仕事をこなした。違うのは、零くんにお昼を振る舞うときにいつもより熱意が感じられたくらいか。普段を知らない零くんは「美味しい! さすがAの師匠さん!」とべた褒めしていた。妬くぞ。
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えりんぎ苺(プロフ) - バッグ・クロージャーさん» 面白いと言っていただけて嬉しいです……! 楽しみにしていただいているので、更新頑張らなくっちゃですね。コメントありがとうございました! (2020年5月25日 16時) (レス) id: b6e0dc5b12 (このIDを非表示/違反報告)
えりんぎ苺(プロフ) - ひかりさん» 面白いと言っていただけて嬉しいです。すぐに反応していただけるとは……わたしは幸せ者ですね! 更新頑張ります。コメントありがとうございました! (2020年5月25日 16時) (レス) id: b6e0dc5b12 (このIDを非表示/違反報告)
バッグ・クロージャー(プロフ) - すっごく面白かったです!更新楽しみにしてます! (2020年5月25日 16時) (レス) id: 09ffad4c5f (このIDを非表示/違反報告)
ひかり(プロフ) - めちゃ面白いです!さっき更新された話もまじ良かったです! 更新待ってますっ!! (2020年5月25日 16時) (レス) id: 2b9098a683 (このIDを非表示/違反報告)
えりんぎ苺(プロフ) - サクラさん» 面白いだなんて、すっごく嬉しいです! 零くん視点の予定はなかったのですが、もしお待ちいただけるのなら、完結後に番外編として書かせていただきたいのですが、よろしいでしょうか? コメントありがとうございました! (2020年5月25日 13時) (レス) id: b6e0dc5b12 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:えりんぎ苺 | 作成日時:2020年5月21日 19時