彼のいない朝 ページ40
なんだか肌寒く感じて、すうう、と意識が浮上した。布団はしっかり被っている。おかしいな、寒いはずがないのに。
しかたない、子供体温の零くんを抱きしめて二度寝しよう……そう思って隣に寝ているはずの零くんを抱き寄せようとした。
すかっ。
……い、ない? いつも零くんが寝ているあたりをぼふぼふ叩いても、「痛いよ」の声はなかった。しかも温度が感じられない。いなくなってからしばらく経っている。
慌てて飛び起き、布団をめくった。いない! 先に起きたか? 時計を確認すると、朝の四時。零くんは寒がりだから、こんな早い時間に起きるはずがない。
…………もしや帰った? それとも、今までの全部夢?
「いや待て落ち着け。日付は……零くんが来てから二か月経ってる。夢説は消えた。……妄想だったらやばいぞあたし。妄想癖極めてんなー」
口に出すと、冷静になっていく気がした。焦る気持ちを落ち着かせて、先に服を着替える。
零くんのものを見て回ると、ほとんどは残っていた。ないのはパジャマとロケットくらい。そういえば昨夜身に着けていたのもそれらだ。
彼は珍しくロケットを着けたまま寝てしまっていて、外してやろうかとも思ったけれど、あんまりにもぐっすり寝ていたのでやめたのだ。彼は寝相も悪くないし、絡まる心配もないだろうと。
零くんは着の身着のまま消えてしまった。うーん…………これは、帰ったのか。
「マジかぁああ……」
ずるずると壁に背を預けて座り込む。足を抱いて鼻までを沈めた。何もする気が起きてこない。
どうして帰っちゃうんだよ零くん……、いや、帰れるまでうちにいなよって言ったのはあたしだけど、どうしてこのタイミングなんだよぉ…………。
えー、今かよ〜〜〜……もっと早ければこんなに焦ることなかったのに。もっと遅ければちゃんと準備できたはずなのに。
二か月も一緒にいたから、なんとなくもうしばらくは帰らないような気がしていた。時が経つにつれて、零くんのホームシックも減っていったから。最初はどうしようもなく不安になったらしく泣いたりしていたのだけど、だんだん笑顔が増えていった。
零くんの家族も友達もみんな必死になって捜していたのだろうから……あたしは、「もっと一緒にいたかった」なんて言えない。
ああ、でも、どうしよう。
彼がいない朝は、こんなにも寂しい。
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えりんぎ苺(プロフ) - バッグ・クロージャーさん» 面白いと言っていただけて嬉しいです……! 楽しみにしていただいているので、更新頑張らなくっちゃですね。コメントありがとうございました! (2020年5月25日 16時) (レス) id: b6e0dc5b12 (このIDを非表示/違反報告)
えりんぎ苺(プロフ) - ひかりさん» 面白いと言っていただけて嬉しいです。すぐに反応していただけるとは……わたしは幸せ者ですね! 更新頑張ります。コメントありがとうございました! (2020年5月25日 16時) (レス) id: b6e0dc5b12 (このIDを非表示/違反報告)
バッグ・クロージャー(プロフ) - すっごく面白かったです!更新楽しみにしてます! (2020年5月25日 16時) (レス) id: 09ffad4c5f (このIDを非表示/違反報告)
ひかり(プロフ) - めちゃ面白いです!さっき更新された話もまじ良かったです! 更新待ってますっ!! (2020年5月25日 16時) (レス) id: 2b9098a683 (このIDを非表示/違反報告)
えりんぎ苺(プロフ) - サクラさん» 面白いだなんて、すっごく嬉しいです! 零くん視点の予定はなかったのですが、もしお待ちいただけるのなら、完結後に番外編として書かせていただきたいのですが、よろしいでしょうか? コメントありがとうございました! (2020年5月25日 13時) (レス) id: b6e0dc5b12 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:えりんぎ苺 | 作成日時:2020年5月21日 19時