＊ ページ16
中から出てきたロケットペンダントを、零くんはそっと手で持ち上げて、じっと見つめたまま口を開く。
「本当に、僕にくれるのか……？」
「あげるよ。零くんのために買ったの」
そのロケットは男性用だから、零くんがいらないなら困るな。親しい男性はいないし……いつかできるまでとっておく？ いやいや何年後になるかわからない。はは、笑えねえ。
零くんはたっぷり二分ほどロケットと見つめあっていたが、やがて満足したのかぱっとこちらに視線を向けた。口をぱくぱく動かしているが、肝心の声が聞こえてこない。マヌケ顔だ。
その顔は初めて見たので、また知らない顔を知れてうれしく思う。そんな顔でもイケメンなのが癪だけど。
「きれいでしょ？」
「うん、とっても……」
「一目惚れしてね。零くんの色だったから」
「えっ……」
「金髪と蒼い目。初対面の女にアクセサリーもらうのは嫌かなーとは思ったんだけど、もう買っちゃってて……。いつ渡そうか迷ってたんだ」
肩をすくめ、ちろりと舌を出しておどけてみせる。
いや思ったよ。いくらあたしが安室透を知っているとはいえ、向こうからしたら会って数時間の年上の女。というか十一才下の男の子にペンダントあげる二十五の女っていう図がもうやばい。
けどもう買ったあとだったんだ。店員さんに値引きしてもらった手前、返品するのには無理があったんだ……。
「ありがとう……、すごく、うれしい」
零くんの声は震えていた。いろんな角度からロケットを眺め、光に透かしてみたり、両手で包んでみたりしている。本当に喜んでくれているようだ。
零くんは何かを言おうとして、一度やめ、躊躇った様子を見せてから、あたしの胸に飛び込んだ。
？？！？！！？
ぎゅうっと強く抱きしめられて、あたしはまだ状況が読めずたじたじになる。零くんの口から嗚咽が漏れ出て、あたしは零くんの背に腕を回した。
鎖骨のあたりに頭をぐりぐりと押し付けられる。じんわりと熱を感じて、そこでようやく彼が泣いてるんだと理解できた。零くんをぎゅっと抱きしめて、片手で頭を優しく撫でる。
彼は十四才だ。
まだ大人に守られるべき子供で、大人に甘えるべき子供で、大人に愛されるべき子供だ。
彼がこちらに放り出されて、どれだけ寂しい思いをしていたのか。大人のあたしには、想像することしかできなかった。
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えりんぎ苺(プロフ) - バッグ・クロージャーさん» 面白いと言っていただけて嬉しいです……！ 楽しみにしていただいているので、更新頑張らなくっちゃですね。コメントありがとうございました！ (2020年5月25日 16時) (
レス) id: b6e0dc5b12 (このIDを非表示/違反報告)
えりんぎ苺(プロフ) - ひかりさん» 面白いと言っていただけて嬉しいです。すぐに反応していただけるとは……わたしは幸せ者ですね！ 更新頑張ります。コメントありがとうございました！ (2020年5月25日 16時) (レス) id: b6e0dc5b12 (このIDを非表示/違反報告)
バッグ・クロージャー(プロフ) - すっごく面白かったです！更新楽しみにしてます！ (2020年5月25日 16時) (レス) id: 09ffad4c5f (このIDを非表示/違反報告)
ひかり(プロフ) - めちゃ面白いです！さっき更新された話もまじ良かったです！ 更新待ってますっ！！ (2020年5月25日 16時) (レス) id: 2b9098a683 (このIDを非表示/違反報告)
えりんぎ苺(プロフ) - サクラさん» 面白いだなんて、すっごく嬉しいです！ 零くん視点の予定はなかったのですが、もしお待ちいただけるのなら、完結後に番外編として書かせていただきたいのですが、よろしいでしょうか？ コメントありがとうございました！ (2020年5月25日 13時) (レス) id: b6e0dc5b12 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：えりんぎ苺 | 作成日時：2020年5月21日 19時
