クライ・クライ・ピュア【JW】

◎それも青春（赤） ページ3

「好き」
「ごめん」
「友達からで、ええから…！」
「永遠に友達のままやけど、かまへん？」



目に涙をいっぱいに溜めた子が、友達にもなれないまま走り去っていく。
ああ、結局名前も覚えられへんかった。

身勝手かもしれないが、我侭だと思う。
友達から恋人に発展するなら、今頃この世の中にはウジャウジャカップルが転がってるはずだ。

所詮はただの繋がりでしかない。
数年、数カ月の繋がりから発展なんかしない。

先程まで目の前にいた子、記憶に残ってるのは香りくらい。

彼女と同じ、金木犀にも良く似た爽やかな、
それでいて甘い香り。


俺が大好きな香り。




「わ、何してんの」



彼女がいると思った部室に顔だけ滑りこませたら、10センチの距離に彼女の首筋があった。

ビックリしたよとわらうその口元からは、白い歯が見える。


透けるような肌に、薄いピンクの唇。
赤が似合うから、と髪留めだけは赤い色。
サラリと伸びた少し癖でウェーブがかった黒髪をひとつに結んでいる。

白いセーラー服の眩しさと、紺色の少しよれたプリーツスカートが目に痛い。



彼女が纏う全てのものが好きだ。



他の女は友達以上に思えない、
気づけばそう思えるくらいに彼女に惚れ込んでいた。

仏頂面ばかりしてしまう俺に「アホだね」とわらいかけてくれるその優しさとか、素直になりきれないところとかが可愛くて愛しい。



「またコクられた」
「で、振ってきたんか」
「勝手に泣かれたんや」
「罪深いね、ホンマ」



私は嫌だわぁ、と眉を顰める。
俺、おまえにやったらそんなことせえへんのに。

そんなことは言えない。
その代わりに「好きでモテてるんやないもん」と吠えた。


「わかってるよ」


そうキッパリ返した彼女は、残酷だ。
俺の気持ちを知っていて、俺を全部わかっていて。
俺の好きな赤を身に着けて。

本心は別のやつにあるのに、こうして俺とわらってる。

いつも彼女が見つめるアイツに恋人が出来たって「よかったよね、幸せになりなよ」って彼女はわらう。


でも、俺はそうはなれそうにない。


残酷な彼女を愛してる俺やって、もっと残酷。
きっとそれも、俺と彼女がこうして制服を着ているこの時間だけに与えられた許される罪なのかもしれない。

これこそが青い春というやつだ。
その言葉で片付けられるなら、数年、数カ月後にどうだろうとも、俺はこの想いを貫いてやろうと思っている。

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