「愛してない」 (ページ9)

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はあ、と頭上からため息が聞こえてくる。

座り込んでしまっているわたしと同じ目線になるように、その人はしゃがみ込む。

「お前が……お前が死にたいと思ったなら、死ねばいい。俺は止めない。」

『……』

「これが最後だからな。」

『えっ…？』

「お前自身がちゃんと死にたくないと思え。今度からはお前が、自分自身で止めろ。」

『……、』

「出来るか」

『……っ、うん、』

「……逃げんなよ。」

そんな当たり前の事、今まで誰が教えてくれただろうか。

『……っ、う…ぐすっ、』

「泣き止め。めんどくせぇ。」

『ごめ、なさ…』

「ったく、」

ライトブラウンの髪が、ふわっと揺れる。

目の前の男は、目を細めてゴツゴツした大きな手のひらをわたしの頭に添えた。

ゆっくりと、優しく、わたしの頭を撫でる。

こんな優しく撫でられたのは初めてで、びっくりして、嬉しくて。

また涙が溢れた。

その人は少し目を見開いてわたしを見ていたが、やがて優しく微笑んでくれた。

それがとてつもなく優しい微笑みだったから、この優しさを忘れないように、胸に焼き付けた。

始まりの、音がした。

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