検索窓
今日:9 hit、昨日:3 hit、合計:771,146 hit

08 ページ8

パシンッ


電車が過ぎ去り、朝の静かな空間の中で響く音。

引っ張られた腕がジンジンと痛い。

痛い……?

あれ?

わたしはまだ、死んでない?


『っ、て…』


頬に染み渡る痛みを意識した瞬間、込み上げて来た涙を流した。

熱い、熱い。

頬も、顔も、目も、鼻も、何もかも。

何に対して泣いているのか。

痛くて泣いているのか。

悲しくて泣いているのか。

安心して泣いているのか。

よく分からない。

ただ、ボロボロ流れる涙が止まらなくて。

わたしの腕を引っ張った目の前の男を見た。

わたしの、一度どころか二度目の勇気さえ踏みにじった男。

苦しそうに眉をしかめるその人を見て、何故か分からないけれどまた涙が流れた。


「何泣いてんの、」

『…っ…は、』

「泣くほど怖かったんじゃねぇの?」

『…ぅ、っ』

「半端な覚悟で死のうとしてんじゃねぇよ!」


そうだよ。

怖かったよ。

怖くて悪いかよ。

死にたいなんて、この世界から逃げるためのただの理由にしかならなくて。


本当は、出来るなら、死にたくなんか、ないのに。


『……死ぬしか、ないじゃん、』

「……」

『じゃあどうすればいいの……っ』

「……」


悲しみなんてそんな生温いものじゃなくて。

寂しいなんて可愛いものじゃなくて。

身が引き裂かれそうな痛みを、ただ1人で戦わなくちゃならない。


1人目覚める朝だとか、いつも1人で居る大学だとか、1人で食べるご飯だとか、たったそれだけが、どうしようもなく痛いだけ。

わたしには翔太が居た。

翔太が居たから生きて来れた。


殴られても何されても、翔太が居ればそれだけで良かったの。

だけど彼は、わたしを1番として側に置いてるわけじゃない。

わたしは1人になったんだ。

09→←07



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (198 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
877人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

あっぷるぱい(プロフ) - しょっぴーと主人公がお互いに依存してたならば私はこの作品に依存しそうです (2019年7月15日 23時) (レス) id: 23406a511b (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:さと | 作成日時:2016年2月16日 23時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。