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「慣れたか?」
ココアを啜りながら、ひかるさんは呟いた。
突然で何の事を言っているのか分からなくて首を傾げると、ひかるさんはカップを置いてまた呟く。
「バイト。」
『あ、はい。深澤さん凄く良くしてくれて。』
「アイツがねぇ。」
深澤さんは一応店長という肩書きらしいけれど、全然そんな感じではない。
普通にレジしてくれるし、スタッフルームとかでみんなと騒がしく話すし、深澤さんの持つ不思議な雰囲気がやけに心地良かったりする。
店のみんなもそうだ。
いい人、というより、とても優しい人。
バイトが楽しいなんて、初めてだ。
「まぁ上手くやってんなら良かった」
『はい!』
「ここの生活にも、慣れた?」
ひかるさんは足を組み、わたしの顔を覗き込む。
端正な顔に携えた不適な笑みに、正直胸が鳴った。
『…おかげさまで』
「ふぅん」
『何ですか』
「いーや、」
この生活には慣れた。
慣れたが、元来男の人との同居生活というものに無理があったのか、ひかるさんには滅法慣れない。
慣れない、というよりどぎまぎしてしまうというか。
やけに緊張してしまうというか。
“二人”という単語に慣れないだけなのか。
ひかるさんがかっこいいからなのか。
「A」
わたしを名前で呼ぶことも、正直慣れてない。
だけど嫌じゃない。
よく分からない感情がわたしの中にある。
「俺、明日遅くなるから寝とけよ?」
『…うん、』
慣れない、なんて言ったけれど。
帰りが遅くなると言われた日の夜は、寂しい。
ーーーーーーーーー
朝起きたら、もうひかるさんは家を出ていた。
“戸締まりしっかりな、行ってきます”
そう書かれた書き置きと、見慣れた鍵。
『行ってらっしゃい…』
ひかるさんが居ない日は、ご飯は食べない。
めんどくさいとかって気持ちもあるけれど、それ以上に食べる気になれないのか。
身支度を整え、マンションを出る。
一人で呟く行って来ますは、静かな空間によく響いた。
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あっぷるぱい(プロフ) - しょっぴーと主人公がお互いに依存してたならば私はこの作品に依存しそうです (2019年7月15日 23時) (レス) id: 23406a511b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:さと | 作成日時:2016年2月16日 23時