「愛してない」 (ページ24)

今日:6 hit、昨日:6 hit、合計:771,190 hit

24 ページ24

「大変！翔太、先生殴って今校長室！」

暑い夏が過ぎ、冬が来て、そろそろ卒業シーズンって時にそう聞いて一番先に教室を飛び出したのは、わたしだった。

周りとわたしの間にはいつも見えない壁を感じていた。

それは幼い頃から変わらない事で、変に正論をかざす大人でさえわたしにはとてつもなく汚く思えた。

その温度差に、気付いてくれたのは翔太で。

そうやっていつしか、わたしの中に上手く溶け込んでいく翔太に、わたしは惹かれていった。

翔太はヘラヘラ笑ってる癖に、絶対に嘘は吐かない。

周りに合わせる癖に、絶対綺麗事なんて言わないから。

わたしはそんな翔太の言葉だけを信じる事が出来ていったの。

わたしが、わたしが今翔太の所に行って何が出来るかなんて分からないけど。

何でかな。

翔太が泣いている気がしたの。

『翔太！……もう、卒業前になにやってんの…？』

「……あいつさ、“お前の素行が悪いのはやっぱり親が居ないからか？”なんて言うんだ。普通本人にそんな事言わねーって！」

そう言われて、殴ってしまう程ムカついた癖に、またそうやって笑うんだよね。

『翔太ってさ、実は不器用だよね。』

「んだよそれ。」

『翔太が泣けるように、わたしが慰めてあげようか？』

「は？」

『翔太の居場所になってあげる。』

「何言ってんの？」

『だからわたしの居場所も、翔太のとこね。』

翔太は目を見開いて凄く驚いていた。

その後、泣きそうな顔して笑ったんだ。

“バカじゃね”って、呟きながら。

そんな翔太が愛しくて、初めて誰かを守りたいって思った。

翔太の事を抱き締めて、翔太もわたしを抱き締めて、そんな事が始まりでもいい。

ただ、この人と、一緒に居たい。

本気でそう思った。