「愛してない」2 (ページ46)

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ガタン。

物音がして、ゆっくりと瞼を持ち上げた。

辺りはもう薄暗く、身体を起こす。

あの後、泣き疲れて眠ってしまった。

暗闇に目を慣れさせると、リビングに明かりが灯っていた。

心臓が、チクリと痛む。

ひかるさんは、事実を知っただろうか。

さくのさんの結婚の事、どう思ったのだろうか。

傷付いてるの？

泣いてるの？

そうやって貴方は、またさくのさんの事を、想うの？

『わたし、バカみたい……』

側に置いてくれればそれで良かった。

側に居たいと思った。

今更、どの口が言うの？

“愛して欲しい“

なんて。

『……ひかるさん。』

リビングへ行けば、ソファに腰掛けていたひかるさんは、ゆっくりとわたしを見上げた。

その瞳には、光が灯ってない。

「…ごめん。今は誰とも喋りたくない」

『……』

「部屋戻ってろ」

『ひかるさん、』

「戻ってろって！」

哀しげに声が響く。

ひかるさんに近付き、肩に手を添えれば強く振り払われた。

それは明らかに、拒絶を表していた。

「触んなっ！」

『…ひかるさん』

「お願いだから…っ」

わたしを包んでくれた時と同じように、ひかるさんを抱きしめる。

それが愛しくて、凄く哀しい。

頭を掻き抱くように抱き締めれば、またひかるさんの身体が震えた。

「何なの、お前…」

『だって、ひかるさん泣いてるから』

「泣いてねーよ…！」

『泣いてるよ…』

「…A、離せ。」

『嫌だ。』

「今離さないと、俺何するか分かんねぇから。」

『…いいよ。』

「あ？」

ぎゅうって、力を込めて。

貴方の身体が震えないように。

わたしの気持ちで、満たしてあげれたら。

『いいの、ひかるさん。』

「お前何言っ……」

『わたしを利用してくれればいいよ』

「……」

『ひかるさんの悔しい気持ちとか、どうにもなんない気持ち…わたしにぶつけてよ、』

「A、」

『わたしが、受け止めるよ…』

貴方の傷を、わたしが癒せたらいいのに。