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昨日はあれから、ひかるさんにも1人の時間が必要だと思って黙って部屋に戻った。

今朝もいつもと変わらない会話をして。

まるで、昨日のことはなかったかのようだった。


「いらっしゃいませー…あれ、Aじゃんっ!」


大学終わりにバイト先に行けば、服を持ったままわたしの元に来たのは佐久間さん。


「あれ?今日仕事じゃないよね?」

『あ…シフト確認しに来たんです。聞こうと思ったけど深澤さん電話しても出なくて。』

「あ、今ね、お客さん来てるよ?」

『そうなんですか。…じゃあ待ちます。』


だから電話出なかったのか、なんて呑気に思いつつ、どっちにしろ来月のシフトを聞いておきたいから待っていようとそのまま店の裏に回る。

事務室に近付くと少しだけ話し声が聞こえて来た。

邪魔するのは悪いから、事務室の前で待っているといきなり扉がガチャリと開いて、出て来たのは深澤さんだった。


「っ、Aちゃんっ!?」


深澤さんにしては珍しい、慌てたような声。


『?、どうしたんですかそんな慌てて。』

「いや…」


上擦ったような声。

それに重なったのは、


「辰哉くんとこのバイトの子かな?」


綺麗で穏やかな、女の人の声だった。



直感で「嫌だ」と思った。

その女の人を見て、逃げたい気持ちになったから。


深澤さんがわたしとその人を交互に見て、焦っている。

心臓が、疼いてる。


「?、どうかした?」


首を傾げてこっちを見つめてくるその瞳は…

ああ、そっくりじゃないか。


どうしよう。

きっとこの人…



「…桜乃さん」



深澤さんが、呟いた。


肩の辺りまで緩く巻かれた髪型。

決して大きくはないけれど、澄んでいて綺麗なライトブラウン色の瞳。

華奢な、身体。

いかにもお嬢様。

わたしの部屋のクローゼットに置き去りにされたままの、あの服がどれも似合いそう。


『…か、帰ります。』


やっと言葉に出来たのがこれで。

しかも言っといて足は動かない。


…帰りたい、帰りたい。


だけど大きな不安がわたしを襲う。


もしかしたらこの人、ひかるさんに会いに来たんじゃないかって。


ひかるさんとまた暮らそうって考えてたら、どうしよう。



居場所が、なくなる。

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かえで(プロフ) - この小説大好きです!!!いつも更新楽しみにしてます(^^)頑張ってください☆ (2016年3月21日 22時) (レス) id: 683565b60e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:さと | 作成日時:2016年3月1日 16時

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