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「ごめんAちゃん、シフトの事はまた折り入って連絡するから」
わたしの肩を抱き、庇うみたいな体勢で深澤さんがそう言った。
コクリと頷いたけど、わたしの心はどっかに行ったまんまだ。
不安がドロドロと、心の中を侵してく。
「帰れる?」
『……あ、はい…』
「じゃあ暗くなる前に帰んな?」
そう促されて足を進める。
見たくないのに、さくのさんを見てしまう。
綺麗な人だ。
綺麗で、ひかるさんと、似ている。
…ダメだ、怖い。
震える足を叱咤して扉を開けようとした瞬間、廊下に響いたのは無機質な携帯の音だった。
深澤さんは、鳴り続ける自分の携帯の画面を見つめたまま呆然としていた。
「辰哉くん、出ないの?」
さくのさんが、呟いた。
深澤さんは眉を歪めて、しばらく黙る。
「…いいんだよ気を遣わなくて。照からでしょ?」
『えっ、』
思わず出してしまった声に、心臓が嫌な音を立てて鳴る。
そしてそれにいち早く反応したのは、さくのさんだった。
「…えっと、照の知り合いかな?」
『あ、いや、』
「……辰哉くん。」
「……」
促すようにさくのさんは少し強めの声を出した。
観念したように、深澤さんは携帯を耳に当てる。
嫌な汗が、伝う。
指先が冷たい。
逃げたいと思った。
「もしもし……うん。え、早くないか……うん……」
深澤さんはわたしをチラリと見て、そして頷く。
「いるよ……は?!いや、すぐ帰すから、」
焦っているような声に戸惑いが生まれる。
深澤さんはわたしとさくのさんを交互に見ながら、らしくなく声を荒げる。
「おい、待てって!まずいからー……!っ、ち、切られた」
『あの……』
「……照、来るって」
『え……?』
心臓を鷲掴みされたみたいに痛みを伴う。
震える身体をゆっくりと、さくのさんの方に向けた。
さくのさんは、試すみたいに、わたしを見据えてた。
「…照と、どういう知り合いなの?」
『わ、わたしは…』
真っ白な頭で必死に言葉を紡ごうとした瞬間、見慣れた、愛しい、大好きな姿が見えた。
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かえで(プロフ) - この小説大好きです!!!いつも更新楽しみにしてます(^^)頑張ってください☆ (2016年3月21日 22時) (レス) id: 683565b60e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:さと | 作成日時:2016年3月1日 16時