『 Fly so high!! 』

Limit 41. ページ21

『それよりも、お前が俺達と共にあの資料を見に来るのかどうかの方が重要だ。
もしお前自身が許すなら、その場所で生活を送る事を決意してくれても良い』

『……生活、って』

『それが俺達からのお前への礼という事だ。保護者などは居ないから様々な条件は
付き物だが、現状は人が一人増えたところで、こちらには何ら問題もないのさ』



自分の親族等という保護者が存在せず、そんな彼らに自給自足は必須だ。

ただし、一人だけではどうにも出来ない事もある為に
彼らは互いに集まって、協力し合って生きている。

ほんの数人なんていう小さな規模ではなく、数十人という仲間を以て。
そこへ一人増えようが増えまいが、彼らにとっては些細な変化なのだ。



『……だとしても……』



凪斗に言われた彼女は、戸惑いを隠さずに彼らから目を逸らす。



『突然そんな事を言われても、どうしたら良いか』

『……だからこの話も含めて、礼の件は後で考えれば良いんだ』



繰り返して言うようだが、今この時点で
何よりも重要なのは、資料についての事なのだから。

他の事は後からついて来る形でも遅くはない筈だ。



『さあ、どうする? 俺達について来るか、このまま別れるか。お前が決めるんだ』



誰も強制しないし、誰もAの出した決断に不満など覚えない。
そう言いながら両腕を組み、返答を待つ様子を見せた凪斗。

傍らでは翔も懇願するような目つきで彼女の姿を見つめている。

彼らの言う“お礼”についての話は、
やはり今のところは決断し兼ねたが──でも、行くだけなら。



『……──わかった。行くだけ行って、見てみる』

『よっしゃあ!』



実のところは、彼女自身も資料の中身の事は気になっていたのだ。

ああだこうだと色々と口にしてしまったし、初対面という事もあり
誘いをかけて来る彼らを疑いすらしてしまったが、今は何となく──

似た境遇にあるという者を前にしたからか、二人を信用する事は出来ると思った。



『あと、私はAだから──相手一人の名前くらいは覚えて』

『…………? ──ああ、悪かったな』



どうやらAは、先ほどから“お前”と呼んで来る
凪斗の発言も気にしていたようだ。

唐突にそれを切り出された彼本人は一瞬、訳が分からずに首を捻りかけたが
すぐに納得すると、僅かに苦笑いを零しながら非礼を詫びていた。





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