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恋人にするかのように私を優しく抱き締めたツギハギ呪霊に唖然とする。
このまま人質に取られるのか、それとも連れ去られるのかは分からないけど弱ってるくせに呪具を持っている私に近付いてくるなんて正気じゃない。
「やっと捕まえた。」
「そんなに弱ってるのに?」
「今日は引くけど今度は俺と一緒に行こうね、A。」
攻撃が来る前に呪具をツギハギ呪霊の腹に突き付ける。が、全然手応えがない。
物を切りつけたというよりは刃物が空を切った時みたいな感じがして「え、」と声が漏れた。
「Aさん!引いてください!」
「え、あ!はい!」
その声に従って身体を引くと七海さんは私の横を通り抜けて排水口へと急いで向かう。
七海さんの向かう先には排水口とそこから逃げ出そうとするツギハギ呪霊。
いつの間に移動していたんだ。
「バイバ〜イ。」
「待て!」
「楽しかったよ。」
ギリギリ間に合ったか間に合わなかったか微妙なラインで七海さんが排水口に攻撃をぶつける。が、そこにはもうツギハギ呪霊の姿はなかった。
あんなに弱ってたし近くにいたのに払えなかった自分の力量にグッと唇を噛み締める。
「私達も追いましょう!……!虎杖くん!」
「え、虎杖くん!?」
後ろを振り向くと地面に横たわる虎杖くんの姿があって、前の少年院の時を思い出して頭が真っ白になる。
ペタッとその場に座り込んで吐き気を手でぐっと抑え込んだ。
まだ死んでない、死んでないのに安置所にあった虎杖くんの死体を思い出してしまって呼吸がどんどん荒くなっていくのを感じる。
「Aさん!虎杖くんを今すぐ運びましょう!」
「……っあ、」
「Aさん!?」
七海さんが呼んでるからすぐに虎杖くんの元に向かいたいのに呼吸は正常に戻ることを知らない。
どんどん荒くなっていく息に比例するように身体が震えはじめる。
そんな私の身体を七海さんが優しく抱き締めた。
「大丈夫、虎杖くんは生きてます。」
「ご、めんなさい……私……」
「ゆっくりでいいから落ち着いてください。術師の家系に生まれて長年術師をやっていたとはいえ、一度でも友人の亡骸を目にすればフラッシュバックするのは痛いほどわかります。」
私を落ち着かせるために何度も、何度も、優しく背中を撫でてくれる七海さんの背中にそっと手を伸ばす。
七海さんはそんな私に「大丈夫ですから。」と優しく声をかけてくれた。
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ゆう - 続き早くみたい!! (3月19日 14時) (レス) @page39 id: f37b355590 (このIDを非表示/違反報告)
パンピー - 一気に読みました!!すごく面白くて好きです!もう更新はしてもらえないのでしょうか,,,?続き,楽しみにしてます! (2月18日 23時) (レス) id: 2630b906e6 (このIDを非表示/違反報告)
あ - 面白すぎて、一気読みしました!もう続きはないのでしょうか……? (10月26日 19時) (レス) @page39 id: ba86f2a0b9 (このIDを非表示/違反報告)
久遠(プロフ) - めっちゃ面白いです!! これってもう終わりなんですか、、? (2022年7月19日 22時) (レス) @page34 id: d025dfcb18 (このIDを非表示/違反報告)
みか(プロフ) - お父さんまだ娘はやらん的な、親バカだといいな。と脳内お花畑が通ります。すっごく面白いです!一日で全部読んじゃいました!。更新待ってます (2022年1月11日 18時) (レス) @page31 id: 7db18ffeeb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:もも | 作者ホームページ:https://mobile.twitter.com/Momo_UxxU_
作成日時:2021年3月21日 17時