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路地裏に軽いリップ音が響いて傑くんと離れる。と、傑くんは軽く笑った。
「そういうつもりじゃなったんだけど……」
「え、キスじゃないの?」
「キスよりも血液が欲しかったんだけどね。据え膳食わぬは、ってやつだよ。」
私の反応を楽しむように「Aもしたそうだったし。」なんて言った傑くんを睨み付ける。
実際に話してたのは10年も前の話だけど傑くんってこんな感じの人だったっけ、と不信感を抱きながら視線を逸らす。
宿儺も血が何とかって言ってたけど私の血液なんて無価値に等しい気がする。
「私の血使って何かする気?」
「くれたら教えてあげるよ。」
これ以上交渉しても血をあげないとそれを使う理由も傑くんの目的も教えてくれないだろうな、と察して護身用に持ってきていた小型ナイフで小指を軽く切る。
じわっと滲む血をどうやって渡そうか考えていたら傑くんが私の手を取って小指を口に含んだ。
ザラザラした舌の感触が傷口に触れて痛みが増す。
蜂蜜を舐めるかのように喜んだ顔で私の血を舐めていた傑くんは最後にジュッと傷口を吸って血液を出し切った。
「予想してたけどフェロモンが流れてるおかげか呪力が上がるみたいだね。高専にいても暇だろう?このまま私の側につかない?」
「そんなこと……!」
「呪霊の餌、なんて言われてる慶光院家から抜け出したほうが身のためだよ。」
痛いところを突かれて言葉が詰まる。
確かに後ろ指を指されている家系から抜け出したい気持ちはある。でも抜け出して呪詛師として生きたところで後ろ指を指されるどころの話じゃなくなっちゃう。
悠仁くんの件ですごいムカついたけど家を裏切ることはできない。
「そっち側には行かないよ。」
「……それは残念。人に効くようになったって聞いてフェロモンの使い方も考えてたんだけどなぁ。」
私の腕を掴んで自分の元へ引き寄せた傑くんは先程と全然違う噛みつくようなキスをした。
全然優しさの欠片もないただ満悦を求めるだけのキスで路地裏に自分の甘い声が響き渡る。
その声を聴くのが嫌で傑くんから離れようとしても腰元を掴まれて離れることができない。
宿儺の激しく貪るようなキスとは違って妙にいやらしさとか色気がある大人のキスに頭から足先まで蕩けていくのを感じた。
「フェロモンの影響かな、手に入れたくて仕方ないな。」
息を必死に整える私の頭を撫でながら「明日も会いに来るね。」と言った傑くんは路地裏から姿を消した。
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作者名:もも | 作者ホームページ:https://mobile.twitter.com/Momo_UxxU_
作成日時:2021年2月2日 19時