Freiheit ��

＊ ページ32

敵がいない。
位置情報を元に現場に来たはいいものの、人がいる気配がない。
はぁ、本当に世話の焼く奴。
目黒｢…助けない、って言ったのになぁ…｣
つい3時間前の言葉を思い出しながら、各部屋を開けていく。

目黒｢…あ？｣
通り過ぎそうになった廊下の壁に目がいった。
少しだけ色の違う壁。僅かに薄い色の壁。ここだけ新しく塗り直したにしては、範囲が狭いし何より怪しい。
目黒｢…はあ｣
パーカーの中からナイフを出し、投擲する。
それだけでヒビの入った壁に、疑心は確信に変わった。

壁に向かって思い切り蹴りを入れると、案の定壁は崩れてくれた。
やはり、隠し階段があったのか。
少し早足で降りると、牢獄だらけの部屋のところに、男が1人、立っていた。
目黒はそれを見て｢はぁ…｣と今日何回目かわからない溜息をつく。

目黒｢佐久間くん何やってんの｣

佐久間｢…あははは！流石めめだね〜！康二見習えよ！｣
向井｢だって！だってぇ！！｣
岩本｢とりあえずお前明日から訓練の量増やすから｣
目の前のやり取りに目黒は、何となく事の次第を察する。
あぁ、｢また｣お灸を据えられたか。


さて、時は数十分前。
｢…もう少し訓練が必要みたいだな｣
｢酷いよ康二！俺の事愛してくれてたんじゃないの〜？ここまで気付かないって！｣
監視員の2人は、そんな事を言いながらマスクを口下にずらす。
向井｢な、何で…？照くんと、佐久間くん…？｣
見慣れた、いや、見慣れすぎた顔が現れた。
向井は頭が追いついていない。

岩本｢お前らがまた喧嘩してるし、しかもそれで訓練に気合い入ってなかったみたいだからなぁ…？｣
向井｢あ…えっと、それは…｣
佐久間｢あっでもちょっとは上手くなったよねぇ！俺一瞬死ぬかと思ったし｣
岩本｢人質に取れた時に気を抜いただろ、今回みたいなケースもあるぞ｣
向井｢は、はい…｣


そう。向井と目黒の喧嘩に手を焼いた岩本のたまに行われる｢お灸を据える｣誘拐事件(でっち上げ)だったのである。
訓練の時にそんな喧嘩理由でモチベーションが上がらない、なんてされた岩本の怒りの発散とも言う。

目黒｢…悪かったと思ってるよ｣
佐久間｢あら珍しいめめから謝った｣
目黒｢刺すぞ｣
佐久間｢おおこわ｣
向井｢……ごめんなさい｣

どうやら、目黒は最初から薄々気付いていたらしい。
それでいて、騙されたフリをしていたのは…彼なりに何か思う事があったからなのか。
真実は目黒ただ1人しか知らない。

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