Freiheit ��

＊ ページ24

阿部｢……兄ちゃん……？……あれ、おれ、何………何、して………？｣
佐久間｢何、って…｣
阿部｢剣……おれ、何で、剣なんか……？…何で……？…何で、そんなに、おどろいてるの……？｣

おかしい。何かが、おかしい。
ゆらりと顔を上げた阿部は、｢シンメの佐久間｣に向けた顔ではなく、｢兄の大介｣に向けた顔をしていた。
でも、何かがおかしい。

佐久間｢…りょー、へー…？｣
阿部｢ここ、どこ…？おうち……おうち、帰ろ、兄ちゃん、お父さんと、お母さんが、まってる｣
佐久間｢何言ってんの…？父さんと母さんはあの時…それに今の家はS隊でしょ…？｣
阿部｢えす、たい…？何、それ…？｣

その言葉で疑惑が確信に変わった。
阿部は｢S隊の事｣を忘れている。いや、S隊に入るよりも前、父と母が──
阿部｢………っ……｣
佐久間｢亮平！｣
また身体がガクリ、と揺れる。
咄嗟に倒れそうになった身体を支えた。

阿部｢………っ！？｣
一瞬の事に理解が追いつかなかった。
どんっ、と押し出された身体は体勢を崩してそのまま後ろへ倒れ込んだ。
阿部｢だ、誰…！｣
そう言って剣先を向ける阿部に、佐久間はまたも理解が追い付かない。

阿部｢その、服…同じ…？じゃあ、味方…？α国の、軍の人…？｣
…自分の事を、そのまま忘れてしまっている…？
佐久間｢…………そう、君がフラフラしてたから、手を貸そうと思ったんだよ｣
絞り出すように、誤魔化した言葉と手は震えていた。

…やだなぁ、今更他人同士なんて、考えたくもなかったのに。

引き攣った笑いになってしまっただろうか、精一杯の笑顔を浮かべて、阿部に手を差し出す。
阿部が少しホッとした顔で、｢…ありがとう、ございます｣なんて出会った時のような敬語で言って、その手を取ろうとして、そのまま、
バタリ、と倒れてしまった。

佐久間｢亮平…！？｣
急いで彼の元へ行き抱き上げると、目を瞑った彼の顔が見える。
それに安堵した自分と、また何か忘れてしまうんじゃないか──もしかしたら、さっきみたいに、自分の事を忘れてしまっているんじゃないか──という不安に駆られた。

目が覚めるまでは、彼の傍にいてやろう。
次目を覚ました時に何を忘れてしまっているか、はたまた覚えているかわからないから。
彼が目を覚ました時に、また笑ってやろう。笑顔を向けてやろう。敵でも味方でも、兄弟でも、彼が大好きだった自分の笑顔を見せてやろう、と。

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