第70話 ページ20
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私が名前を呼べば、嬉しそうに彼は笑う。
「やっぱり覚えててくれてた!」
「……あんた、こんなに背高かった?」
「今でもバスケしてるからね」
貴澄の目の色、髪の色。
それを見た私は、SCの入口にいた子を思い出し、そちらを指さした。
「あ、そうだ。あんたに似た子が、そこの入口で待ってるけど、もしかして弟?」
「ん?あ、そうそう!僕の弟!教えてくれてありがとうA!」
貴澄は、自分の弟の姿を視界に捉えると、私たちに手を振り、駆け足で弟の元へ向かった。
彼を見送った私たちは、SCに背を向け、帰路につく。
しばらく歩いた所で、ポケットに入れていた携帯の着信音が鳴る。
「電話?」
「うん」
誰からの受信なのか、携帯の画面を見る。
(……柚季さん?)
このタイミングで、何故彼女から電話がかかってきたのかは分からない。
けれど、何か急ぎの用かもしれないと、その場で電話に出た。
「もしもし」
『あ、Aちゃん。今何処にいる?家かな?』
「いえ。岩鳶駅の前です。どうかしましたか?」
『今から病院に来れたりする?あ、お母さんがどうとかじゃないから安心して!』
「何があったんですか?」
『とりあえず、来てくれる?話はそれから。じゃあね』
向こうから一方的に切られた電話。
ツーツーと無機質な音が響くと、私も電話を切る。
「……ごめん、2人で帰ってて。今から病院行ってくる」
「何があった」
「私も、分からない。来たら分かるって、柚季さんが。それじゃあね」
2人に手を振ると、私は駅の改札口へ行き、ICカードを改札にかざしてホームに入る。
そして、タイミング良く来た電車に乗り込み、私は病院へと向かった。
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作者名:水神友花 | 作成日時:2018年12月2日 23時