story203 ピアノソナタ『月光』殺人事件35 ページ9
Aside
目暮警部が村沢さんがこんな所で何をしていたのかと言った途端、令子さんは目に涙を溜めながら今にも泣きそうな表情で知らないから自分が知りたいくらいだと言っていた
......あの村沢さんが婚約者の令子さんにも隠していた事があるなんて...
その時、新一君は村沢さんのズボンに入っていたある物に気づいたらしく、ソッと取り出して見つめている
......!それってピアノの調律に使うチューニングハンマーじゃない!
もしかすると...村沢さんは...
「触らないで!周一の物なんだから!」
何事かと思って見てみると令子さんが新一君からチューニングハンマーを奪い取りながら怒鳴っていた
どうやら令子さんは婚約者の村沢さんの私物を自分以外の人間に触れられるのがよっぽど嫌みたいなのね...
年配の警官から令子さんの小さい頃は誰とでも仲良くなれる様な優しい子で村民にも好かれていたと言っていたけど...今では全くの別人だし
10代前半で母親を亡くし、周りから父子家庭である事を悪く言われ続けていたのなら優しい性格が歪んでしまい、ヒステリックな性格に変わり果ててしまうのも無理はないわね
『何ですか?それは』
「分からないけど、周一が大事にしてる物だから...」
私は気になって令子さんに声をかけてみると令子さんはさっきみたいに怒鳴らず、落ち着いた声で村沢さんが大事にしている物だと教えてくれた
てっきりさっきみたいに怒鳴り散らすのかと思っていたけど...どうやら違ったみたいだ(苦笑
あのチューニングハンマー...前にも何処かで見た様な気がするのよね...
「よし!とにかく容疑者達を村役場に集めろ。事情聴取のやり直しだ」
「はい!」
目暮警部がそう言うと、他の刑事は返事をした後に他の人達を呼びに行った
その後、みんなが村役場に行く中、私はグランドピアノを調べる為にピアノの方へと歩けば新一君も私の後をついてくる
ピアノの下に潜りつつ私は新一君と共に調べ回る
確か...あの辺りを触っていたはず...
「Aさん達、どうかしたんですか?」
『窓から逃げた不審者が逃げる前にピアノの底を探ってたのよ』
「だから何かあるのかぁと思って」
蘭ちゃんの問いかけに私と新一君は口々にそう言いつつもピアノの底を探し回る
確かこの辺りのはずよね...
ピアノの底を触るとカタッと言う音が聞こえ、ゆっくりと動かすと隠し扉になっていた
蘭ちゃんも気になったのか私達と同じ様にピアノの下に潜り込む
「ちょっと何これ!隠し扉じゃない!」
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作者名:黒羽明菜 | 作成日時:2018年6月16日 2時