15【褄紅蝶とダブステップ】 ページ15
その時、赤い花がぐわんと歪んだ。
歪んでいるように、ではなく本当に歪んだ。
唐突に訪れた目眩に近い不調に額を押さえて視界を安定させようとするも、お構いなしにぐらぐらと頭は汚く回る。自分の意思で動く筈のない脳が、ふらふらと自由に頭蓋を漂っているような感覚だ。うう、と情けない地を這うような声を出して、私はテーブルの上に所狭しと敷き詰められた空の皿の上に突っ伏した。陶器が予期せぬ重量に悲鳴をあげた。
「エーミール、さん」
「ふふ、そんな熱視線を向けられたら照れてしまいますね」
うっとりと幸せな夢でも見ているかのような顔で、紳士だった彼はそんな事を言った。恐らく青褪めて血の気も引いて死にそうな顔でもしているのであろう私を、エーミールさんは今まで細めていた目をかっ開いて興味深そうに眺めている。純白の双眸が爛々と輝いていた。
単に私がアレルギーか元々の体調不良でこうして潰れているのならまだ良いのだが、彼の反応を見る限りは。
「く、貴方、毒は入れてないって」
「ええ、入れていませんよ？ですが」
『薬を盛っていない』とは、私一言も言ってませんよ？
口元に手を当て、馬鹿な相手を見下し笑う様はまるで何処かの貴婦人のようだった。嗚呼、彼の本性はこうなんだな、と未だぼんやり揺れ続けている頭が諦めにも似た最悪の結論を導き出した。
「あは、綺麗やろ？彼奴ら、きっと頭の中にも汚いお花が沢山咲いとるからこういう花咲かせんの得意なんやろなあ」
白い肌に散るキスマークを女性よりも細い指でするすると撫でたエーミールさんは、つい５分前まで朝食が載っていた皿を無駄のない動きでシンクへと運ぶ。その間も私が少しでも喋ればさらに酷く頭が揺れてしまう事を見透かしていたのか、彼の口は回り続けていた。
「あーもうほんまにあのアヒル共癇に障るんよな。自分の春も水も純潔も見境なく売り捌く癖に、なーんも言わずに俺の春も掻っ攫ってくねん。醜いアヒルも金だけじゃ色々足りんようになったらしいわ、どうせ使わんのに無駄な知識ばっかり覚えるよなあ」
「此方が気遣って寝てる間に終わらそうとしても、彼奴ら寝てる間もガーガー喚くねんな。あの嘴赤い糸で縫い付けてダッチワイフの小指とでも繋いでやろうか思ったわ」
「滅多矢鱈あいつら上から目線なんよ、組み敷かれた状態で下から俺の事上目遣いで見てくるのに可笑しな話やと思わん？───って、あはッ、今アンタ喋れへんのやったな」
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まも。 - 語彙力が半端ない…好きすぎる。 (3月16日 18時) (
レス) @page20 id: f3d61cfa83 (このIDを非表示/違反報告)
にゃーちゃん - やばい…osmnが色気爆発し過ぎてて死ぬ…更新楽しみにしてます！ (2023年2月15日 21時) (レス) @page32 id: fd6863f2a6 (このIDを非表示/違反報告)
雪乃 - 更新再会っ！頑張ってください！ (2022年8月20日 14時) (レス) @page32 id: c39d7e026e (このIDを非表示/違反報告)
じばくとっこうたい - お久しぶりです！この作品本当に大好きです。osさんっっと悶えてました。新作もすごく面白かったです！これからも応援しています！ (2022年2月23日 18時) (レス) @page32 id: 8209a7a990 (このIDを非表示/違反報告)
ネロ - 過去最高1位おめでとうございます！！前からでしたらすいません。気づいたので書き込ませていただきました。 (2021年9月12日 19時) (レス) id: 60a73795c6 (このIDを非表示/違反報告)
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