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「えっ……と………。これ、は」
「見ての通り、鼠の丸焼きだ」
「ねずみ」
「些か急ではあったが、運良くいい具合に太った鼠を捕獲できた。さぁ、暖かいうちに食べるといい。左馬刻と銃兎の分もあるぞ」
にこにこと嬉しそうな笑顔を浮かべる理鶯さんに悪意は何一つないようで。
先程まで「どうすれば食わずに済むか」と会話をしていた碧棺左馬刻と巡査部長は、その笑顔に苦虫を噛み潰したような表情を浮かべる。これはもう逃げられない。
しかし。ねずみの。まるやき。
あまりの見た目に言葉には出来ないが、確かに何かの生物の丸焼きであることだけはわかる。しかしえぐい見た目である。ただひたすらにえぐい。
「えっと、これ、どうやって食べるんですか…?」
「引きちぎって食べるのだが…女性は男性の前でそれはし辛いな、今裁断しよう」
「…ひぇ……」
丸焼きといえどあまりの、禁がつきそうなレベルのえぐさなので省略しよう。
無事に食べやすくなってしまった。まだ脳裏に丸焼きの鼠と裁断される鼠の姿が……、やめろ思い出すな私。
だが私はこれを食べなくてはいけない。こんな善意しかない理鶯さんに「鼠はちょっと」とか言えるわけがない。もしかしたら美味しいかもしれないし。そういう問題でもないのだけど。
「い、いただきます。……あ、美味しいです」
「そうか、口にあったのなら僥倖だ。もし良ければ、また料理を作ろう。今度は鼠以外に蛇や烏、タランチュラなども捕獲しておく」
「たらんちゅら」
それ蜘蛛では……、いや何も聞かなかったことにしよう。
さて、今の問題はこの鼠である。
確かに美味しい。食感や味は鶏肉っぽい。目を瞑れば、一体これが何かを知らなければ全然食べられただろう。
しかし私の脳裏にはあの光景が鮮明に残っている。食べにくい。食べにくいとかいうレベルじゃあない。
ちらりと碧棺左馬刻と巡査部長を見ると、必死にひたすら食べていた。怖い何この光景。今日寝れない気がする。
助けてくれる人はいない。食べるしか、ない。
意を決して、鼠の丸焼きの姿や裁断される様子を思い出さないように、私は必死に食べ進めた。
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Alice(プロフ) - 更新再開して欲しいです。頑張ってください。応援してます(*`∀´*) (2020年3月31日 10時) (レス) id: 2fbbeea056 (このIDを非表示/違反報告)
さらんりちぇ(プロフ) - 更新再開されることを期待しています (2019年3月5日 18時) (レス) id: e255b55531 (このIDを非表示/違反報告)
陽雪(プロフ) - おかえりなさい!またかっこいい左馬刻が見れるのが癒しです〜!! (2019年1月27日 21時) (レス) id: 8bf1da7ca5 (このIDを非表示/違反報告)
ニャルラトテップ(プロフ) - 華狐さん» 返信が遅れてしまい申し訳ありません。お褒めの言葉ありがたや…!こちらこそ、ありがとうございます! (2019年1月27日 16時) (レス) id: 2bb930aa0e (このIDを非表示/違反報告)
ニャルラトテップ(プロフ) - 八花鏡さん» 返信が遅れてまい申し訳ありません。お褒めの言葉ありがとうございます!それだけで私はたくさん頑張れます。いえ、頑張らせていただきます! (2019年1月27日 16時) (レス) id: 2bb930aa0e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ニャルラトテップ | 作成日時:2018年11月16日 1時