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今度はスーツの男性が私に話しかけてきた。
先ほどのように、腹の底の見えない笑顔を浮かべながら。
「初めまして暗晦さん。私は入間銃兎です。階級は……あぁ、貴方なら知っていますよね」
「は、はい。初めまして、暗晦Aです……」
「A。いいお名前ですね」
少しだけ顔をあげれば、碧棺左馬刻は未だこちらをガン見していた。穴があきそう。
出来るだけ視線を合わせないように、入間巡査部長の方を見つめると、彼はポケットからお守りを取り出した。
「これはあなたのものですか?」
「あ、あぁ、そうです!! 何処で落としたのかな……」
「彼が拾ったようですよ」
「え」
彼、といって巡査部長が指さしたのは、もちろん碧棺左馬刻で。そして指さされた方を素直に見てしまったので、また彼と目が合った。
――嗚呼、血のように赤い瞳だ。吸い込まれそう。
少し瞳に見惚れたまま、「ありがとうございます、あとすみませんでした」というと、彼はそっぽ向いた。
あ、ちゃんとお礼と謝罪いえた。凄いぞ自分。
そう思いながら再び巡査部長へと視線を向けると、何故か碧棺左馬刻も私へ再び視線を向けた。なんでだよ。
「さて、これで解決……としたいのですが」
「え」
「嫌ですね暗晦さん、そんな簡単に許されるとでも?」
「殺されると思ってました」
ポロリ、と本音を漏らしてしまい、慌てて口を噤んで手で抑える。
ゆっくりと様子を伺うと、碧棺左馬刻は「てめぇ、俺様をなんだと思ってんだ」と何故か怒っているし、巡査部長は「素直ですねぇ」とくすくすと笑っていた。
「あぁ、話を戻しましょう。端的に言えば、左馬刻はどうやらあなたを気に入ったようでね。許されたければ、彼の言うことを1年。聞き続けてください」
「あの、その、突っ込みたいことがあるんですけど、とりあえず拒否権って」
「ありません」
「ですよね……」
全く何がなんだか分からないけど、私は碧棺左馬刻に気に入られてしまったらしい。もうここから分からないのだが。
そして、許されたければ1年。1年も。私は彼の言うことを聞かなくてはいけないらしい。長い。
…だが、これで命が取られることはないらしい。ならば、選択肢はひとつしかない。元からひとつしかないけど。
「……よろしくお願いします」
「おう、たぁくさん可愛がってやるよ」
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Alice(プロフ) - 更新再開して欲しいです。頑張ってください。応援してます(*`∀´*) (2020年3月31日 10時) (レス) id: 2fbbeea056 (このIDを非表示/違反報告)
さらんりちぇ(プロフ) - 更新再開されることを期待しています (2019年3月5日 18時) (レス) id: e255b55531 (このIDを非表示/違反報告)
陽雪(プロフ) - おかえりなさい!またかっこいい左馬刻が見れるのが癒しです〜!! (2019年1月27日 21時) (レス) id: 8bf1da7ca5 (このIDを非表示/違反報告)
ニャルラトテップ(プロフ) - 華狐さん» 返信が遅れてしまい申し訳ありません。お褒めの言葉ありがたや…!こちらこそ、ありがとうございます! (2019年1月27日 16時) (レス) id: 2bb930aa0e (このIDを非表示/違反報告)
ニャルラトテップ(プロフ) - 八花鏡さん» 返信が遅れてまい申し訳ありません。お褒めの言葉ありがとうございます!それだけで私はたくさん頑張れます。いえ、頑張らせていただきます! (2019年1月27日 16時) (レス) id: 2bb930aa0e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ニャルラトテップ | 作成日時:2018年11月16日 1時