検索窓
今日:8 hit、昨日:1 hit、合計:177,982 hit

2 ページ4

どうやら碧棺左馬刻と入間巡査部長は、この1枚の壁の向こう(壁と言ってもほんの申し訳ない程度)の椅子に座っているらしい。

試しにちらりと覗いてみると、白い髪が見えた。やばい本当にいる。

先輩は「骨は拾ってあげる」と言って逃げてしまった。私も逃げたい。逃げさせて。だめか。


…さて、どうやって、何を言いながら私は2人の前に姿を現せばいいのか。

必死に考え込んでいる中、後ろから誰かが肩を掴んだ。


「ひ…っ……」

「…暗晦さん、ですよね? 入りづらいですよね、どうぞこちらに」

「え、あ、はい、すみません……」


七三の髪型に眼鏡。細身のスーツに赤い手袋。

優しそうな笑顔―しかし腹の底の読めない怖い笑顔に言われるがまま、壁の向こう側へと案内される。

碧棺左馬刻はタバコを吸いながら、椅子の高さに合わない低い机の上に足を乗せ、その赤い瞳で睨みつけてきた。

悲鳴をあげそうになるのを必死に抑えながら、対面するように椅子に座る。

――お母さん、お父さん。あと数少ない友人たち。私の人生、ここまでのようです。

心の中で神に祈りを捧げ、両親や友人に別れを告げた。


…椅子に座ってから、しばらく沈黙が流れた。

膝の上に置いた手を見たまま決して顔をあげようとしない私に痺れを切らしたのか、碧棺左馬刻は大きな舌打ちをする。

びくっ、と私の肩が大袈裟に揺れる。怖い。舌打ち怖い。しかもずっと見てきてる。怖い。

顔をあげないまま、ちらりと見れば、まだ赤い瞳がこちらに向けられていることに気付き、すぐに視線を手に戻す。

えなにこれ、私が謝るまでずっとこのまま? 私が悪いの??

そんな沈黙の中、とうとう碧棺左馬刻が口を開いた。


「おいクソ女。てめぇ、俺様に言うことあんだろうが」

「……記憶にございません……」


アホか謝れ私。なんだよ記憶にないって。汚職をした議員の言い訳か。

予想通り怒りに触れたのか、彼は机を蹴っ飛ばした。膝に当たった。痛い。


「左馬刻、1回落ち着け。お前が怖くてパニックになってるんだろう。俺が話をつけるから大人しくしていろ」

「ちっ、さっさと終わらせろや」

3→←1



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (402 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
1153人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

Alice(プロフ) - 更新再開して欲しいです。頑張ってください。応援してます(*`∀´*) (2020年3月31日 10時) (レス) id: 2fbbeea056 (このIDを非表示/違反報告)
さらんりちぇ(プロフ) - 更新再開されることを期待しています (2019年3月5日 18時) (レス) id: e255b55531 (このIDを非表示/違反報告)
陽雪(プロフ) - おかえりなさい!またかっこいい左馬刻が見れるのが癒しです〜!! (2019年1月27日 21時) (レス) id: 8bf1da7ca5 (このIDを非表示/違反報告)
ニャルラトテップ(プロフ) - 華狐さん» 返信が遅れてしまい申し訳ありません。お褒めの言葉ありがたや…!こちらこそ、ありがとうございます! (2019年1月27日 16時) (レス) id: 2bb930aa0e (このIDを非表示/違反報告)
ニャルラトテップ(プロフ) - 八花鏡さん» 返信が遅れてまい申し訳ありません。お褒めの言葉ありがとうございます!それだけで私はたくさん頑張れます。いえ、頑張らせていただきます! (2019年1月27日 16時) (レス) id: 2bb930aa0e (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:ニャルラトテップ | 作成日時:2018年11月16日 1時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。