吐き捨てた花 / 傭兵 ページ22
消えた喉の詰まりと荒い息。床に落ちているモノを見て、どうして、と後退りした。
赤と黄色の名も知らぬ花を呆然と眺めていれば誰かが階段を上がってくる足音が聞こえ、慌てて花をかき集めて自室に飛び込む。
閉じた扉の前で花を抱えたまま座り込めば、廊下を歩く人の足音がよく聞こえた。一瞬私の部屋の前で止まったみたいだけど、そのまま通り過ぎて行った。
数回深呼吸をして、花を見下ろす。
…嘘だ。嘘だ嘘だ嘘だ！
まさか私が、こんな病気になるなんて！
嘔吐中枢花被性疾患。通称花吐き病と呼ばれていて、主に片思いをしている人に発症する病気であり、感染源は誰かが吐いた花である。
う、と喉を迫り上がる物質に嘔吐きながら口を抑える。はらはらと指の隙間から花弁が舞い落ちた。
酷い、酷いよ神様！こんな仕打ちは酷すぎる！
折角諦めがつきそうになっていたのに！ああ、表ではそうしようとしても裏ではずっと想っていたからいけないのか！
ふらふらと立ち上がりベッドに倒れ込む。赤と黄色の花と花弁が白いシーツによく映えていた。
「──の時間だ。……A？入るぞ？」
思考が覚醒したのは、どれくらい経ってからだろうか。
愛しくてたまらない彼の声にズクリと胸が痛み、入っちゃ駄目、と言う声の代わりに花弁が吐き出された。
「A……？お前、それ、」
「ナ、ブ……」
バレたか、いや、でも、大丈夫、実際に花を吐くところはギリギリ見られていない筈。
ああ、どうして今日に限ってイライではなくナワーブが呼びに来たんだろう。花を見られた絶望感とこの病気にかかった情けなさは微笑みに隠した。
「あはは、掃除大変だし、花をこんな風にしてエマに怒られちゃうなぁ……秘密でお願い」
「ああ、勿論」
最初見た時、血ぃ吐いて倒れてるのかと思った。
そう言って赤の花弁に伸ばす彼の手を掴む。ダメだ。触れたら、感染してしまう。
「、A？」
「わ、たし、お腹すいたなぁ。早く食堂行こう？呼びに来てくれてありがとね」
「ん、そうだな。今日はマルガレータとウィラのシチューだってさ」
「やった、二人が作る料理好き」
「俺も」
何でもない顔をして部屋を出る。ちゃんと鍵をかけて、あの花の存在を隠して。
ナワーブの後ろを付いて行く。
だから気が付かなかったのだ。
彼が心臓の前であの憎たらしい赤色の花弁を指でいたずらに弄んでいたなんて。
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める@黒執事(プロフ) - リパ様えちえちだ…。鼻血が止まらん… (2019年11月18日 23時) (
レス) id: 62ac38a52f (このIDを非表示/違反報告)
Lonely(プロフ) - りんご?さん» 閲覧、コメントありがとうございます。マリー様良いですよね〜！下僕になりたい欲望をぶつけて書きました(´ω`*)気に入ってくださったようでなによりです！ (2019年10月5日 23時) (レス) id: b9652ac74b (このIDを非表示/違反報告)
Lonely(プロフ) - 玲さん» 閲覧、コメント、リクエストありがとうございます。楽しんでいただけているのなら書いている甲斐がありました！悲しさを表現できるかどうか分かりませんが、最善を尽くさせていただきます…！想像と違うものが出来上がっても何卒ご容赦を……!(′･ω･`*) (2019年10月5日 23時) (レス) id: b9652ac74b (このIDを非表示/違反報告)
りんご?(プロフ) - 血の女王好きなので小説で書かれていて何度も読んでしまいました！！笑笑 (2019年10月3日 1時) (レス) id: a099461a17 (このIDを非表示/違反報告)
玲(プロフ) - いつも楽しく読ませていただいてます！リクエスト？があるのですが「脳に刻む&骨に刻む」の失恋バージョンを読んでみたいです。主人公ちゃんとイライが交際していることを知ったナワーブ君が見てみたい！(←ただの変態でごめんさい！ (2019年9月24日 20時) (レス) id: 750579a695 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：遊歩 x他1人 | 作成日時：2019年1月5日 10時
