ドクターコール5 ページ36
和サイド
大学生の仲良し3人組の女の子たち。初めての海外旅行らしい。
1人青白い顔をして肩で息をしているのがわかる。
かわいそうに、だいぶ辛そうだな。
「初めまして。僕は医者の風山和です。
こっちは兄の翔で同じく医者です。だいぶ苦しそうだね？お名前は？」
「な、なかたに、さ、さきです。はーはー。く、くるしい」
そう言って、胸のあたりをぎゅーっとつかむ。
翔兄が目線が同じになるまで腰を下ろして、
ちょっとごめんねと言って、胸をつかんでいる手をとり
脈を確認している。
腕時計に目を落として、
しばらくして、100以上、頻脈だね、と言った。
乗務員がドクターバックを持ってきてくれるまでの間
優しく話しかける。
おそらく初の海外旅行、さっきのかなり揺れた乱気流、長時間のフライト、
機内の閉塞感が重なって、不安になり過呼吸を起こしたみたいだ。
「初めての海外旅行なんだって？ハワイ楽しみだねー？
息が苦しいの到着までに楽にしてあげるから、ゆっくり一緒に呼吸しようか。」
話しかけながら、
ゆっくり大きく背中をさすりながら、
それに合わせて呼吸ができるように促す。
だいぶゆっくり上手に呼吸できるようになってきた。
胸の圧迫感も少し良くなってきたみたい。
手を取り脈を確認するとまだ少し速いけど80台くらいまで下がってる。
翔兄も頚動脈に指をあてて、だいたい80台くらいまでになってるね、と言う。
もう大丈夫そうかなと思ったころに
ドクターバックを乗務員が持ってきてくれた。
中を見ると、あまりたいしたものは入ってないけれど、
ゴソゴソ聴診器を取り出した。
「呼吸はどう？さっきよりは息苦しさ、ましになったかな？
念のために胸の音聴かせてもらってもいいかな？」
と一言声をかけて、服の上から胸部聴診をする。
肺野全体をゆっくりと時間をかけ丁寧に聴診していくが
特に呼吸音に問題はない。
心音も雑音もなくリズムも問題ない。
心拍数も落ち着いてきて70台前半まで戻ってきてる。
聴診器を耳から外し
「特に問題ないから安心して。
ちょっと不安になって、ドキドキして
息も苦しくなったんだね。もう落ち着いてるから大丈夫。
また苦しくなったら遠慮なくいつでも呼んでね」
さきちゃんの血色は良くなり、
「ありがとうございます」
と笑顔で言った。
席に戻り智兄と雅に過呼吸の発作だったけどもう落ち着いたと伝えた。
その後ハワイ到着まで何事もなかった。
やっと到着したぞ！楽しむぞーハワイ！
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作成日時：2013年6月1日 22時
