98話:豆腐の力 ページ2
「少し塩気が足りない気がする。味噌が足りていないのだと思う。食堂にある、小さい方から二番目の大きさのさじで一杯分だけ足すといい」
ビクビクしている私に対して久々知さんが言ったのは、罵りでも否定の言葉でもなく、的確なアドバイスだった。
……この後温めるのにもう一回火にかけるから、その時に味噌を足そうと思っていたんだけど。
風味が飛ぶから味噌を入れた後はあまり長く煮てはいけない、と家庭科の教科書に書いてあったのを思い出したからそうしたのだ。
でも、そう反論するよりも、今久々知さんの目の前で入れてしまった方がいいだろう。
「味噌を、二番目に小さいさじで一杯ですね」
私は返してもらったお椀を一度水で洗うと、お玉で汁を少し注ぐ。
味噌の入った壺の蓋をきゅぽんっと開けて、さじで味噌を掬った。
お椀の汁で味噌を溶かすと、鍋の中に回し掛ける。
よくかき混ぜて、もう一度お椀に掬ってひと口飲んだ。
……こんなもんかな?
塩加減はバッチリである。
後で足そうと思ってはいたものの、どれくらいの量の味噌を足すべきかまではわかっていなかったので、正直教えてもらえて助かった。
「どうでしょうか」
再びお椀を差し出すと、少し驚いたような顔でこちらを見ていた久々知さんはこくりと頷いてお椀を受け取ってくれる。
「いただきます」
さっきは言わなかったのに、今度はきちんと「いただきます」を言ってくれた。
それだけでどこか認められたような気がして、私は小さな期待を胸に彼の反応を待つ。
「うん、美味い」
……おっふ、美形の満面の笑み……。
幸せそうに、何かを慈しむように笑う久々知さんに、ホッと安堵の息を吐いた。
「ありがとうございます。久々知さんのアドバイスのおかげです」
「いや、塩気が足りなかっただけで元々美味しかったから、Aさんの実力だよ」
手放しで褒めてくれる久々知さんに少し戸惑いつつも、私はもう一度お礼を言った。
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真白(プロフ) - わそ姉大好きリスナーさん» ありがとうございます!ホントですか?それは光栄です。天女様系には素敵な作品も多くあるので、私の作品をきっかけに他の方のもいけるようになってくださったら嬉しいです(*´∀`*) (2023年1月29日 18時) (レス) id: f022b78e83 (このIDを非表示/違反報告)
わそ姉大好きリスナー - 面白かったです!自分は天女様系が苦手でしたけど、真白様のこの天女様系はなんかいけました!((^^ω)更新ファイト!!!!です(^^ω) (2023年1月25日 10時) (レス) @page23 id: 888b3d648c (このIDを非表示/違反報告)
真白(プロフ) - 千颯さん» わあああ!ありがたいお言葉ありがとうございます!!!私の更新が千颯さんの生き甲斐になっていたですって……?これからも気合いを入れて更新していきますので、楽しみに待っていてくださいませ! (2022年12月18日 18時) (レス) id: f022b78e83 (このIDを非表示/違反報告)
千颯 - 毎週投稿を楽しみに生きてます( これからも作者さんのペースで頑張ってください!応援してます! (2022年12月11日 11時) (レス) @page18 id: ecd2d0aa76 (このIDを非表示/違反報告)
雪(プロフ) - れいらさん» この更新スピードは、れいらさんを始めとする読者の皆さんのおかげなんですよ!ご期待にお応えできるよう、これからも頑張りますね♪ (2022年10月22日 20時) (レス) id: f022b78e83 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:真白 | 作成日時:2022年10月22日 13時