50話:決定 ページ3
「立花先輩、何を考えておられるのですか! その者は学園に災いをもたらす天女。排除すべき対象だというのに何故庇うのですか!?」
私と同じ葡萄色の忍び装束を着た生徒が仙蔵さんに食ってかかる。
口ぶりからして仙蔵さんの足元に落ちている手裏剣は彼の物なのだろう。
わかってはいたけれど、こんな風に直接ハッキリと言われると流石に傷つく。
そもそも私は天女を自称したことはないのに、何故ここまで言われなければならないのか。
口を固く引き結び、俯きがちに目を伏せた私をチラリと一瞥した仙蔵さんが、一歩前に出た。
「『何を考えているのか』はこちらの台詞だ、滝夜叉丸。学園長先生のお話の最中に手裏剣を出し、あろうことか先生のおられる壇上へうつとは何事か。もしものことがあればどうするつもりだ!」
衝撃を受けたように、滝夜叉丸と呼ばれた生徒が仙蔵さんを見る。
私が落としたマイクを拾った学園長先生が、滝夜叉丸さんを諭すように口を開いた。
「滝夜叉丸。他の生徒も聞きなさい。学園では、此度の天女様であるAさんを一般の事務員として雇うことを正式に決めた。既にその有能さは山本シナ先生や食堂のおばちゃんにより確認されておる。この件に関して不満を述べることは、決定を下したわしに対して意見することだと思うように」
生徒の何人かが信じられないというようにひゅっと息を呑んだのがわかる。
私もだ。
試されてはいるのだろうなとは気づいていたものの、こんなに早く認められるだなんて思っていなかった。
「何か異論のあるものは?」
学園長先生がぐるりと生徒達の顔を見回す。
そんな風に言われて、反論できる者などいないのだろう。
誰もがブンブンと首を横に振る。
「今後、わしの許可なくAAに危害を加えた者にはそれ相応の罰を与える。良いな」
満足げに一つ頷いた学園長先生が静かに朝礼台から降りたのを見て、私も後に続く。
「あの、学園長先生」
「仕事を始める前に、再度お話をさせていただきたい。ついてきてくださいますかな?」
有無を言わせぬ笑みでそう問われ、私は首を縦に動かす。
私自身学園長先生と話したかったのだけれど、これを断れる人などいないと思う。
学園長先生の後を追って生徒達の横を通り過ぎると、モーセの如く私を人が避けていく。
隅の方でぽかんと呆けたように口を開けていた滝夜叉丸さんが、私と目が合うと睨むように鋭い視線を送ってきた。
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わそ姉大好きリスナー - Ahoy 学校行きたくねェェェェェェ 続編に出航〜♪ (2023年1月25日 9時) (レス) id: 888b3d648c (このIDを非表示/違反報告)
雪(プロフ) - 小桜さん» コメントありがとうございます!忍たまって鬼滅並みに難読苗字多いですよね笑。尼子先生の出身地の尼崎の地名から取っているそうなのですけれど、私も最初は漢字と読みがなかなか一致しなくて困りました。食満は初見じゃ絶対に読めないと断言できますよね! (2022年8月12日 19時) (レス) id: 23eb6548af (このIDを非表示/違反報告)
小桜(プロフ) - マジで夢主ちゃんに同感です。食満って名字、最初は「しょくまん」って読んでしまいますよね。私もアニメで聞くまでしょくまんだと思ってました! (2022年8月12日 19時) (レス) @page19 id: 8b4a915ba2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:真白 | 作成日時:2022年4月28日 21時